ES細胞で腎臓立体構造を再現 熊本大が世界初
2017年11月10日 (金)配信熊本日日新聞
熊本大発生医学研究所の太口[たぐち]敦博・元助教(35)=ドイツ留学中=と西中村隆一所長(54)=腎臓発生学教授=らの研究グループは、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)と、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、尿管芽と呼ばれる腎臓の組織を作り出すことに成功。マウスで作った尿管芽は、腎臓の別の組織とつながり、腎臓の立体構造を世界で初めて再現した。西中村所長は「腎臓の再生技術へ大きな前進」と話している。
研究成果は9日付の米科学雑誌「セル・ステム・セル」(電子版)に発表した。
ヒトの腎臓は、約100万個の「ネフロン」と呼ばれる小さな組織で血液をろ過して尿を作り、尿はネフロンを束ねる集合管を通って排出される。
腎臓は、ネフロンの元となる前駆細胞と、集合管の元となる尿管芽、その間をつなぐ間質前駆細胞の三つが作用して形成される。このうちネフロン前駆細胞は、太口元助教らのグループが2013年にips細胞から作り出すことに成功した。
今回、太口元助教らは尿管芽が緑色に光る遺伝子改変マウスを使って尿管芽が枝分かれして成長する様子を分析。体外での培養実験で成熟しやすい条件を整え、ES細胞から尿管芽を作り出すことにも成功した。
作った尿管芽とネフロン前駆細胞を、マウス胎児から取り出した間質前駆細胞と合わせて培養したところ、尿管芽は枝分かれしてネフロン前駆細胞とつながり、腎臓の立体的な構造が再現できたという。
ヒトips細胞を使っても、同様に尿管芽を作ることができた。「今後は幹細胞から間質前駆細胞を作り出すことが必要だ」と太口元助教。「腎臓再生にはまだ多くの課題があるが、今回の研究を基に先天的な腎臓病のメカニズム解明が期待できる」と話した。
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