Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ニコゴリの取り持つ絶妙

2007-06-15 | 料理
煮凝りである。散髪屋に出かける前に朝食用のフライシュケーゼとブロッツェンを取りに行く。その序に旨そうなニコゴリを見つける。二種類あって、片方はリースリングと豚肉で旨そうであるが、先ずは小振りの甘酸っぱくしてある足肉のズルツェを選ぶ。

散髪屋に行かねばならないので、束の間、ガレージに置いておこうかとも思ったが、培養シャーレの中身のようなニコゴリであり、安全を考えて冷蔵庫へとしまう。

床屋では、商店の開店時間について話していると、こちらの「夜中に買物は異常」だから「ドイツを、ロンドンやパリのようにしてはいけない」とする保守的で定言的な意見に対して、床屋の親仁の方が「社会のバランスが難しい」と遥かに中庸な見解を示すので面白い。

さて、ニコゴリを焼きたてのブラートカルトッフェルに塗して食するのであるが、甘酸っぱいのが絶妙で、比較的豊満な辛口リースリングを合わせると、甘い方と酸っぱい方の両翼へと味が分かれ、その中間に押し入るようにワインの香りと味覚が広がる。

これは、妙なる体験で、その中間層にじわりとニコゴリ本来の味が浮かび上がり、コンビーフのような足の肉の味が下支えしているのは、ワイン体験でもあり食事の味体験でもあるのだ。微妙なバランスと言うほかない。このような時間経過と構築感のある味覚を、グルメ趣味は珍味とか呼ぶのだろう。

さて、焼きジャガイモの方は、蒸し器で硬めに蒸して、冷やしてから炒めたつもりであるが、若干柔らか過ぎて自然冷却も充分ではなかった。それでも、敢えて焦げ目をつけなかったにしろ、フライパンにこびり付くことも無く、また脂でギトギトすることも無かった。

ニコゴリの繊細さもあり、マジョーラムと塩コショウとバターのみで、ニンニクなどを入れなかったゆえに、ジャガイモの熱さで融けるゼラチンと肉の味の妙が、ワインによって取り持たれて、皮肉にもこの「おばあちゃんの味」に、その食感と相俟って高質な味覚が口の中で展開した。


参照:
肉屋の小母さんの躊躇 
[ 料理 ] / 2006-02-18
厚切り咬筋と薄切り肝臓 
[ 料理 ] / 2005-12-01
コメント (4)
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