Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

玄人もよく分っていないこと

2011-10-02 | ワイン
承前)繁々と実る葡萄からどんなワインが出来るのか?イエズイーテンガルテンの区画に涼しげにぶら下がる葡萄からはグランクリュリースリングが出来上がるのに対して、その健康さからこれまたそれなりのワインが出来る筈である。しかし、量を落としていないことでミネラル風味は少なく、葡萄ジュースの延長であるフルーティーな極一般的な土地のワインが出来上がる筈だ。ただしそうしたワインは腐りがなくても俗に言われる下品なリースリングとなりかねないほど、2011年の特徴を出した葡萄を反映させるには限度がある。

それでは、なぜ土壌だけでなく、その年の気象の特徴が出ないといけないのか?それは簡単である。自然の恵みである農作物であるからだ。それが必要ないならば、遺伝子工学を駆使して、化学工場の技術で毎年同じようにアメリカ大陸の所謂コーラワインを製品化すればよいのである。欧州はそれに与しない。

その点で、グランクリュつまりグローセスゲヴェックスのリースリングが複雑であり高価な分だけ、長く瓶で熟成するのでその分飲み頃が難しいゆえに、我々愛好家はその啓蒙に骨が折れるのである。要するに欧州以外の人間にもその価値が分るように啓蒙してあげなければいけない使命がある。

それならば同じ区画や土壌からのグランクリュならば同じかといえば全く異なるのである。これは既に九月十九日に報告したとおりで、例えばフォン・ブール醸造所などは全く異なるコンセプトと経済的な理由から多くの葡萄を腐らせていた。それはそれで、早めに選択して収穫してしまえば、健康な葡萄からの清潔なリースリングが出来上がるのである。しかし、ここ十日ほどの世にも珍しい秋の好天による酸の分解を経た葡萄は全く活かされないことになる。まさにこの点が、既にこの時点で2011年産グローセスゲヴェックスにおけるこの醸造所の価値を限定して仕舞っているのである。

こうしたことは玄人もあまり書かないどころか、分っていないのであるが、以外にもその薄造りの味質や深みにかけるリースリングにそれが出ているのは誰でも感じることが出来るのである。それはそれで初心者には分りやすいヘアゴットザッカーなどの日常消費ワインを上手に醸造しているのであるが、我々リースリング愛好家には其処が物足りないのである。オーナー醸造所ではないので限界があるとしても、所有する地所からすればなんとも惜しい結果しか生まれない。

現時点で既に全てのグローセスゲヴェックスは収穫されてしまっていて、同じようにバッサーマン・ヨルダン醸造所も殆ど収穫を終了している。現時点で最後まで粘っているのはビュルクリン・ヴォルフ醸造所であり、流石にオーナーの決断が効いているのである。そして、それだけではない信じられないほどの健康さをその葡萄は保っているのである。そうした葡萄から醸造されるワインがどれほど価値が高いのか?(続く)
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葡萄泥棒も入りやすい家

2011-10-02 | ワイン
旅行に出かける前の週末に事件が起こった。葡萄の摘み取りしようとしていた土曜日に、前列だけを残してそれに隠されるように十二列のピノノワールが密かに摘み取られていたのだった。

前代未聞のこの盗難事件は、フォルストとダイデスハイムの間に広がるヘアゴットザッカーでシュペートブルグンダー種から高級赤ワインを製造していたヴィニゲン醸造所の一角で起こった。被害総額は、2500KG分の葡萄から三千本のワインが出来るとして一本32ユーロとして一千万円を超えると報じられているが、要らぬ作業を省かれた分損失はその三分の一以下であろう。

さて、その摘み取りの痕から機械で一気に夜中に摘み取ったとされていて、近隣の農家が疑われているようで、見つかれば二年以下の懲役となるとされている。だからそんな馬鹿なすることをするものはありえない訳で、犯行は内部事情に詳しい外国人労働者だと推測する。ヴィニンゲンという醸造所で起こったのもまだ十分にマネージメントが効いておらず、出稼ぎ労働者の質も比較的悪いと思われる醸造所だからだと想像される。

最近は観光客の立ち入りも多く、資本投下した分を躍起になって回収している様子が外部からも伺えるが、こうしたところにそうした事業形態の罠があるように思われる。本来ならば大人数で一気に刈り取り、それを急いでプレスするなりして、海外などに運んで売り払わなければ、盗みの成果が出ないわけであり、誰の目も盗んでこうした犯罪を成功させることは難しい。やはり、近隣の監視の目が効かない状況にあったのだろう。

未だ嘗てないような秋の好天が続いている。そして既に報告したように、腐りを避けれた葡萄とそうでない葡萄との差がここに来て予想外に大きく最終のワインの品質の差を広げているようだ。来週の水曜日ごろから再び湿り気が増して、この乾燥した好天は終わるようである。そしてそこまで葡萄を下げておくことで、更に酸の分解即ちリースリングの高品質化が期待できるのである。

先ずは幾つかの写真を比べて、その相違を観察する。以下の二枚は十月二日、日曜日に三百メートルも離れていない地所で撮影したものである。見事に実ってつるが重さに耐えかねるような繁々とした葡萄も健康そうである。そして二つ目は、これまた健康そうで涼しげにぶら下がる葡萄である。この二つの葡萄から出来るリースリングワインは全く違うものとなるのである。何が違うのか?(続く
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