田中さん出入り禁止事件で、意識の強い有権者は気が付いたに違いない。何に気が付いたかは、月曜日の統合記者会見にも顕著なヒントが散見されたのだが、先ずはユルゲン・ハーバーマスがギリシャ金融危機を巡ってエッセイを書いているので、それを掻い摘んでみる。
ギリシャのデフォルト危機に対して、ご存知のようにEUの盟主である独仏の首相がパパンデオウ首相を恫喝したことを非難して、それはポストデモクラシーへの警告であるとする。
国民投票への道を掲げたことで、金融市場の金の亡者を代表とする資本主義者と広く国民の公共の富を追い求める政治組織との「秘密謀議」をEUの次元へと押しやった手腕のみならず、前者を代弁するファイナンシャルタイムをして「本来は、事案が憲法改変ではないので、寧ろ議会が決定するもの」と書かせたように、民主主義の尊厳を救ったと評価する。
つまり、統合会見でも確か週刊誌のジャーナリストが園田政務次官の「大本営発表への統制意志」表明に対して、「政治家に、有権者は、官僚のスポークスマンであってもらうのではなくて、我々の代弁者であって欲しい」というような明白な願望を訴えたが、それをしてハーバーマスの言葉を借りると、「政治家は、平時における一般市民の興味と専門家の指針を結びつけるのみならず、権力が全てを解決出来ない逸脱した状況でリスクを犯して、市民を納得させるだけの憲法規定内での新たな道を開くことが要求されている」となるのである。
それは、G20が制定した世界機軸二十銀行機関の制定と協調を盛り込む必要のあった、80年台以降のインフレ対策などをはじめとする国の予算執行では状況が変えられない構造の中でも、欧州内において決して餓死者などは出してはならない社会の安定と、EUは決して一連邦ではなく共同体であるとする環境と前提の中での民主主義の再確認なのである。
当然のことながら、ハーバーマスは、そこに議論の重要さを説くのであり、その前提となる情報の開示と共有が重要なことは断るまでもないことであろう。そしてオキュパイ運動をして、なにもオバマ政権のホワイトハウスの無策のみならず、議会制民主主義への大きな疑念をそこに見出すのは、六十年代から一線で活躍したこの社会学者ならではの見解ではないだろうか。
繰り返しになるが、福島のような非常時において初めてその大きな構造の裏側が、丁度爆破された建屋の崩壊跡のように見えてくるのである。瓦礫の処理やTPP問題と日常に忙殺されている日本国民自身が銘々判断しなければいけないことは難題ばかりである。しかし、そうした非常事態であるからこそ、通常の政治政略によっては解決不可能で、それどころかそこから得られた集中した強力な権力においてさえも解決できないことが明白となるのである。それならば解決策が何処にあるかは明白である。各々の判断と解決策の中にしかないのである。
余談ながら未だに海外への情報の提供とかを強調する日本の政治家は英語で大本営発表を纏めないといけないと勘違いしているようだ。除染処理された産業廃液を飲み干して、「これには何の意味もない、データを見てもらう以外には」と全く非合理な啖呵を切る政治家の大きな写真とその背景はロイターなどを通じて世界に紹介されていないとでも思っているのだろうか?少なくともドイツ語圏の各界エリートや識者に向かって更に何を付け加えてお知らせしたいとでも言うのだろう。日本の有権者に対して義務を果たせと言うのが市民の総意としてのドイツ連邦共和国からの再三再四の日本政府への要請である。
参照:
Rettet die Würde der Demokratie, Jürgen Habermas, FAZ vom 5.11.2011
田中さんの出入り禁止事件 2011-11-06 | マスメディア批評
ベルリン、原子力の創世と終焉 2011-07-07 | 歴史・時事
西欧の視座を外から再確認 2011-02-19 | 文化一般
外交官なんて不要か? 2010-12-21 | 文化一般
情報の集約を阻止する運動 2011-10-30 | 文学・思想
各自治体に何ぼお願いできますの」と割り振ってゆく方針 (風信子(ひやしんす)の☆本の紹介&エッセー)
中間貯蔵施設を首都圏に誘致しよう (郷秋<Gauche>の独り言)
東京都の放射性ゴミを東電下請けが受注した問題 (平等党カタルシス中継)
(追記) 瓦礫について、私が適切と思う手続き (武田邦彦)
2011/11/7 統合対策室・東電・保安院 会見アーカイブ (IWJ)
逆ギレ会見の東電・寺澤徹哉が重大な事実誤認! 瓦礫焼却を東電グループ企業に要請したのは東京都ではなかった! (ざまあみやがれい!)
女性一人の東電前抗議行動(東京都の瓦礫問題を追及していたフリー記者が出入り禁止になったことに対する抗議) (IWJ)