Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ファウストュス博士への礼状

2012-01-29 | 
「東京電力福島原子力発電所における事故調査の中間報告書」へのコメント締め切りが迫っているので、引き続き従事している。山の上まで走りに出かけようかと思ったが、この冬最初の小雪が舞っていて、この寒さでは腰の張りが心配で、疲れから風邪でも引きかねないと断念する。

昨日は、独日友好150周年の展示に出かけたがそれは後回しにして、トーマス・マンに関するニュース速報を挙げておく。米国亡命時の不明の私信が見つかったというニュースである。なんと思いもかけず、研究家にも全く見落とされていた合衆国の作曲家ロジャー・セッションズに宛てた1948年大晦日の手紙である。

内容は、シェーンベルクをモデルとした作曲家を扱った創作物語「ファウストウス博士」への自らの苦悩を重ね合わせた作曲家セッションズの賛美に対する礼状である。当時セッションズとマンは、プリンストン大学で講座を持っていたので知己があったのだ。

この記事を見て、この名の知れた作曲家が1995年まで生きていたことを知らなかった。手元にあるLPはヴァイオリニストのジーコフスキーが弾いた1943年作ソナタと1966年に完成された「無伴奏チェロのための六つの小曲」である。特に前者は、戦前のヴィーンの作曲家の無調時代のそれを思い起こさせ、新古典的な作風も師匠のブロッホを想起させる。十二音技法を自由に使った後者が教師肌の文化人にありがちな杓子定規な作風になっていないのは和声へのこだわりであるのだろう。イタリアのダルラピッコラやペトラッシまでを思い起こさせるのはその響く理論的な背景にあるに違いない。

ひょんなことで、ノーベル文学賞受賞者の亡命中の現地の人と少しばかりの繋がりが明らかになっただけでなく、ストラヴィンスキーが賞賛した高い教育を受けた文化人作曲家の創作の一端がここに光を浴びたようで思わぬ相乗効果があったようだ。



参照:
Die Lage des Menschen Ein verschollener Brief Thomas Manns zum "Faustus", Hans Rudolf Vaget, FAZ vom 27.1.2012
「ファウストュス博士」索引 2007-12-13 | 文学・思想
コメント
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