満を持して最後の一本のリースリングを開けた。2002年産ペッヒシュタインでである。十年前には何度も垂直試飲させてもらったワインなのだが結局後にも先にも一本しか購入しなかった。理由は特別なリースリングであって、最後の一本しか購入出来なかったからだ。何度も何度も試飲のご相伴に与って友人には勧めて買わせたのだが自分はこの一本である。
理由は単純で、自らは2001年産の繊細さと新鮮さを好むから、垂直試飲するとどうしてもこの特別にミルキーで豊満なそれに手が伸びなかったのである。それどころかその香ばしさは、― ワインは食事のご相伴がモットーの愛好家として ― もはや燻製の鰻しかあわせるものがないという結論が導き出されていたからである。ワインをちびちびと飲むという習慣が全くないものだから仕方がない。ビール党の人間だから仕方がない。
そこでその話をしておいたら、本当にその機会を作ってくれた。山仲間の兄が釣り名人で一週間前ほどに十分に淡水魚を釣ってきたというので、2002年産それと通常の川魚に合いそうな2004年産を持参したのであった。燻製の装置も新しく購入してお披露目となった。鰻も何匹もライン河畔で釣ってきており、コイ科の魚と山で釣ってきたマスの三種類が一週間以上にわたる準備の後燻製にされた。それ以外にもう一種類フリカデールにされてオードブルとなった。驚くべきことに全く臭みもなく砕けた骨が魚を感じさせたぐらいで、塩水につけていた分が残念ながら塩超過となった。
さて燻製の方は新しい装置だったので試し試しの部分もあったが、コイ科のそれだけが燻製が通らずにもう一度繰り返し煙にこめられたのを除いては完璧で、驚いたことにこんなに美味いマスを食したことはなく、やはり手間隙掛けた燻製の威力を感じさせる。そして、コイ科のそれはなるほど藻臭さをどこかに感じるのだが、丁度それは2004年産ペッヒシュタインのどこか曇った香辛料臭さに全く完璧な相性であった。
そして、お目当ての鰻である。これまた脂臭くしつこさの極みのようなこの長いものがこれほどミルキーでぽってり感があるのは知らなかった。やはり体験してみなければ分らない味の世界が幾らでもあることを知った。日本で食される鰻巻きや鰻鮨の程度ではないこの純粋な美味はどうしたことだろう?
それに寄り添う2002年産ペッヒシュタインには、これ以上の食事はないと思わせる相性であった。コルクを抜いてグラスに注ぐや否やその果実風味に確信を持った。幾らか不安があった鰻の油の灰汁にワインが潰されることもなく、ワインが強すぎて鰻の味を分離させることもなかった。このワインは全くフィルンと呼ばれるような黄昏には遠く、色合いも十年前と殆ど変わらない。そしてなによりも2002年の酸が心地よく口の油を綺麗さっぱり洗い流してくれるのである。なんという濃くのある殆ど燻製されたような果実風味だろう。
リースリングと魚の相性。先ずはここに完璧に示すことが出来た。そしてこのグローセスゲヴェックスに黄昏が訪れるのもまだまだ先の様子で万が一可能ならば十年ほど先に2001年産と比較して楽しんでみたいものである。それに比較すると冷夏の2004年産の限界は初めから定まっていたが、新鮮な香料味ではこれまた燻製魚の灰汁を綺麗に流してくれる清涼感がとてもよかった。2009年以降は完全天然酵母醸造となったビュルクリン・ヴォルフのペッヒシュタインであるが価格も上がったが、その質に関してはヒュージョンソンが自らセラーに買い込んだのも当然で、白ワインの最高峰に違いない。
次回は出来ればワインとは関連なく鰻の蒲焼に挑戦してみようかとなったので、色々と鰻の種類やレシピーなどを調べてみなければいけない。しかし、こうした高品質の燻製と比べれば蒲焼の味は殆ど野蛮としかいえないが上手に遣れば鰻そのものの味を引き出すことが出来るだろう。
参照:
摂氏零下の小夏日和 2012-03-07 | 暦
Hop, Step by Step & Jump 2011-12-27 | 文化一般
トロピカルかパッションか 2011-09-23 | 試飲百景
何が必要かが問われる 2011-09-19 | アウトドーア・環境
九月一日はグランクリュ解禁日 2011-09-04 | 暦
自主避難の自主判断基準 2011-08-14 | マスメディア批評
まさに春は虚の状態の季節 2011-03-05 | 生活
理由は単純で、自らは2001年産の繊細さと新鮮さを好むから、垂直試飲するとどうしてもこの特別にミルキーで豊満なそれに手が伸びなかったのである。それどころかその香ばしさは、― ワインは食事のご相伴がモットーの愛好家として ― もはや燻製の鰻しかあわせるものがないという結論が導き出されていたからである。ワインをちびちびと飲むという習慣が全くないものだから仕方がない。ビール党の人間だから仕方がない。
そこでその話をしておいたら、本当にその機会を作ってくれた。山仲間の兄が釣り名人で一週間前ほどに十分に淡水魚を釣ってきたというので、2002年産それと通常の川魚に合いそうな2004年産を持参したのであった。燻製の装置も新しく購入してお披露目となった。鰻も何匹もライン河畔で釣ってきており、コイ科の魚と山で釣ってきたマスの三種類が一週間以上にわたる準備の後燻製にされた。それ以外にもう一種類フリカデールにされてオードブルとなった。驚くべきことに全く臭みもなく砕けた骨が魚を感じさせたぐらいで、塩水につけていた分が残念ながら塩超過となった。
さて燻製の方は新しい装置だったので試し試しの部分もあったが、コイ科のそれだけが燻製が通らずにもう一度繰り返し煙にこめられたのを除いては完璧で、驚いたことにこんなに美味いマスを食したことはなく、やはり手間隙掛けた燻製の威力を感じさせる。そして、コイ科のそれはなるほど藻臭さをどこかに感じるのだが、丁度それは2004年産ペッヒシュタインのどこか曇った香辛料臭さに全く完璧な相性であった。
そして、お目当ての鰻である。これまた脂臭くしつこさの極みのようなこの長いものがこれほどミルキーでぽってり感があるのは知らなかった。やはり体験してみなければ分らない味の世界が幾らでもあることを知った。日本で食される鰻巻きや鰻鮨の程度ではないこの純粋な美味はどうしたことだろう?
それに寄り添う2002年産ペッヒシュタインには、これ以上の食事はないと思わせる相性であった。コルクを抜いてグラスに注ぐや否やその果実風味に確信を持った。幾らか不安があった鰻の油の灰汁にワインが潰されることもなく、ワインが強すぎて鰻の味を分離させることもなかった。このワインは全くフィルンと呼ばれるような黄昏には遠く、色合いも十年前と殆ど変わらない。そしてなによりも2002年の酸が心地よく口の油を綺麗さっぱり洗い流してくれるのである。なんという濃くのある殆ど燻製されたような果実風味だろう。
リースリングと魚の相性。先ずはここに完璧に示すことが出来た。そしてこのグローセスゲヴェックスに黄昏が訪れるのもまだまだ先の様子で万が一可能ならば十年ほど先に2001年産と比較して楽しんでみたいものである。それに比較すると冷夏の2004年産の限界は初めから定まっていたが、新鮮な香料味ではこれまた燻製魚の灰汁を綺麗に流してくれる清涼感がとてもよかった。2009年以降は完全天然酵母醸造となったビュルクリン・ヴォルフのペッヒシュタインであるが価格も上がったが、その質に関してはヒュージョンソンが自らセラーに買い込んだのも当然で、白ワインの最高峰に違いない。
次回は出来ればワインとは関連なく鰻の蒲焼に挑戦してみようかとなったので、色々と鰻の種類やレシピーなどを調べてみなければいけない。しかし、こうした高品質の燻製と比べれば蒲焼の味は殆ど野蛮としかいえないが上手に遣れば鰻そのものの味を引き出すことが出来るだろう。

参照:
摂氏零下の小夏日和 2012-03-07 | 暦
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何が必要かが問われる 2011-09-19 | アウトドーア・環境
九月一日はグランクリュ解禁日 2011-09-04 | 暦
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