お蔭様で、未だに飢餓地獄に落ちたことはない。それでも、今日の食事な様なものを口にせずに終わるような事があるならば、どんなにか不幸なことかと思う。煮汁ともども僅か三ユーロで、腹一杯に、この世で最も繊細な味を体験出来るのだ。
パリの三ツ星レストランであろうが、ザウマーゲンを絶賛するポールボキューズであろうが、これほどの味覚は創造出来ないのである。何千ユーロを一晩の食事に費やしてもこれほどの味覚を体験出来ないのである。哀れな守銭奴達よ、俗物達よ、精々、自ずからの感覚を騙して、つまらないものを有り難って貪りつきなさい。
塩コショウを溶かして塗すためのこの煮汁は、コラーゲンたっぷりで、一度暖めて置いておくと常温で直ぐにゼラチンとなってしまうほどである。本日は、鼻と頬の肉を特別に楽しむ。
塩コショウ以外に調味料など何も要らないのである。ただただ、豚肉の繊細な味に集中すると、それは殆ど官能の世界に至るのである。鼻のあの弾力、頬の霜降り、様々な食感を堪能出来るのだ。
正直に思う。調味料を多用する食事などは、食文化レヴェルが低いのである。美味いものには調味料などは要らない。
それに合わせて、現在市場に出ている2006年度産最高級の辛口リースリングを試す。これまた、フランス最高級のパフュームの微かな香りが、草生して蜂蜜の滴る花畑に漂う。謝肉祭湯豚に、これほど見事な飲み物があるだろうか?
しかしどんなに高級なリースリングワインにも引けをとらない、繊細で穏やかな味覚がこの料理である。この世にこれほどの味覚は無いのである。グルメの馬鹿者たちよ、求めるものこんなに身近にあるのだ。
このワイン、これまた一筋縄ではいかない。これほどまでに味の核が無いワインは珍しい。幾らその実体を捉えようとしても、するりと腕から逃れてしまう、透けたベールを裸体に絡ませたニンフの様なワインなのである。刻々とその姿は変容して、そのしなやかな肢体に触れようとすると、手元に残るのはその薄いベールのような羽衣だけなのである。
再び、燻らして鼻を近づけると、突然媚びたような色香を放つかと思うと、たちまち遠ざかり、どうしても掴みきれないのである。手元のグラスに永遠の憧憬を一身に吸収しながら、ますますこちらの歓心を煽り、官能へと誘うのである。どうしたものか?
その価格だけでは無く、このワインを見つけて買える労働者は居ない、しかし、この豚煮を器を持って煮汁ごと買いに行けない労働者も居ないのである。なにも特別に腹を空かして貪りつく必要も無い、市場価値とはそもそもこうしたものなのである。
参照:
そして鼻の穴が残った [ 料理 ] / 2005-08-04
風邪ひきの時の滋養 [ 料理 ] / 2007-02-07
パリの三ツ星レストランであろうが、ザウマーゲンを絶賛するポールボキューズであろうが、これほどの味覚は創造出来ないのである。何千ユーロを一晩の食事に費やしてもこれほどの味覚を体験出来ないのである。哀れな守銭奴達よ、俗物達よ、精々、自ずからの感覚を騙して、つまらないものを有り難って貪りつきなさい。
塩コショウを溶かして塗すためのこの煮汁は、コラーゲンたっぷりで、一度暖めて置いておくと常温で直ぐにゼラチンとなってしまうほどである。本日は、鼻と頬の肉を特別に楽しむ。
塩コショウ以外に調味料など何も要らないのである。ただただ、豚肉の繊細な味に集中すると、それは殆ど官能の世界に至るのである。鼻のあの弾力、頬の霜降り、様々な食感を堪能出来るのだ。
正直に思う。調味料を多用する食事などは、食文化レヴェルが低いのである。美味いものには調味料などは要らない。
それに合わせて、現在市場に出ている2006年度産最高級の辛口リースリングを試す。これまた、フランス最高級のパフュームの微かな香りが、草生して蜂蜜の滴る花畑に漂う。謝肉祭湯豚に、これほど見事な飲み物があるだろうか?
しかしどんなに高級なリースリングワインにも引けをとらない、繊細で穏やかな味覚がこの料理である。この世にこれほどの味覚は無いのである。グルメの馬鹿者たちよ、求めるものこんなに身近にあるのだ。
このワイン、これまた一筋縄ではいかない。これほどまでに味の核が無いワインは珍しい。幾らその実体を捉えようとしても、するりと腕から逃れてしまう、透けたベールを裸体に絡ませたニンフの様なワインなのである。刻々とその姿は変容して、そのしなやかな肢体に触れようとすると、手元に残るのはその薄いベールのような羽衣だけなのである。
再び、燻らして鼻を近づけると、突然媚びたような色香を放つかと思うと、たちまち遠ざかり、どうしても掴みきれないのである。手元のグラスに永遠の憧憬を一身に吸収しながら、ますますこちらの歓心を煽り、官能へと誘うのである。どうしたものか?
その価格だけでは無く、このワインを見つけて買える労働者は居ない、しかし、この豚煮を器を持って煮汁ごと買いに行けない労働者も居ないのである。なにも特別に腹を空かして貪りつく必要も無い、市場価値とはそもそもこうしたものなのである。
参照:
そして鼻の穴が残った [ 料理 ] / 2005-08-04
風邪ひきの時の滋養 [ 料理 ] / 2007-02-07