『ヌーヒン、バンコクに行く』

　タイの標準的娯楽映画とはこんな感じ、って思わせる。そんな出来のかわいいコメディー映画だ。正直言ってたいした映画ではない。でもこういう映画が、本国では国民的大ヒットを飛ばしても驚かない。このくらいのわかりやすい映画がきっと大衆の嗜好にぴったりと合う映画なのだろう。正直言うと『シチズン・ドック』とは比較にも何にもならないくらいにお粗末な映画なのだが、一般的な観客の支持を受けそうなわかりやすさと単純さを兼ね備えた作品で好感が持てる。

　田舎から小さな女の子がたったひとりで都会に出てきて、偶然からある大邸宅でお手伝いさんとして働くことになる。そこでの彼女のおてんばぶりを描く。

　次々に騒動を起こして、すったもんだするさまが描かれていく。毒にも薬にもならない娯楽映画だが、きっとタイの一般的な観客は大笑いしながら楽しいんだことだろう。ドタバタ騒ぎの数々や、それが最後には上手く収まることとか、ほんとうに一昔前の日本のホームドラマみたい。

　主人公の女の子が凄まじく不細工で、でも愛嬌があるのも、なんだかだが、いかにもだ。この平和でノーテンキなだけの娯楽映画を見ながら、時間がもったいない気もしたが、たまにはこういう無駄な時間があってもいいか、なんて思うことにした。