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映画・演劇のレビュー

空晴『もう一回の、乾杯。』

2010-03-12 23:15:38 | 演劇
 いつも同じような設定で家族の絆を描く岡部尚子さんの新作。だんだんこのシリーズのリズムに身体も馴染んで来て、まるで寅さん映画を見てるような気分で、安心して見ていられるのが嬉しい。本作はこのシリーズの中でも最高の仕上がりになった。

 今回はベランダを舞台にして話が展開する。結婚式を巡るお話である。まぁ、中身はいつもの会話劇だ。

 結婚式の朝、新郎の実家に親戚がだんだん集まってくる。実は昨日の晩から酒盛りは続いている。もうなんだかわからないぐらいにぐちゃぐちゃになってるようだ。きょう、本番を迎えるのだが、式以前にけっこういろんなことが起きてドタバタしている。久しぶりに会う従兄弟とかが、すっかり様変わりしていて、誰が誰だかわからないまま挨拶をしたり、なんだかたわいないエピソードが心地よい。

 家族という今の時代では失われつつある運命共同体をもう一度見つめ直そうとする岡部尚子さんのアプローチはすてきだ。シチュエーションコメディーの体裁を持ちながらも、今では困難なものとなりつつある他者とのコミュニケーションの問題を真摯にみつめていこうとする。

 甘くて優しいだけの芝居ではない。頑なに自分のスタイルを守って、その中でひとつのテーマをひたすら追いかけていくのがいい。もちろん難しい芝居ではない。とても楽しい芝居だ。見終えたとき、暖かい気持ちにさせられる。

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