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映画・演劇のレビュー

山崎ナオコーラ『あたしはビー玉』

2010-03-12 22:17:08 | その他
 ナオコーラが書く高校生小説。こういうものが出るなんてなんだか意外。でも、興味津々で読んでみた。カバーイラストが可愛いすぎて、ちょっと恥ずかしかったが、気にしないでいつものように電車で読書。

 内容的にはなんだか『リテイクシックスティーン』を思わせる。最近こういう高校生小説ばかり読んでる気がする。(まぁ実際そうなのだが)ビー玉が高校生の男の子に恋する、なんていうあり得ない設定はなんだか先の梨屋アリエとそっくりなのだが、『シャボン玉同盟』と並べるとその差は歴然とする。(でも、今読んでる『スノウ、ティアーズ』となら甲乙つけ難いのだが。まぁ、その話は後日)

 さすがにナオコーラは、どんな奇抜な設定であろうとも、それを見事にドラマの中に生かしきる。どこにでもあるようなつまらないファンタジィーになんかはしない。設定した仕掛けに拘らず、普通の生活スケッチとしてドラマを綴っていくのだ。高校生男子を扱ってもいつものようにテンションの低いまんまで、さりげないドラマを見せてくれるのは見事だ。これならビー玉女子なんか必要ないほどなのだが、そこはそこ。ちゃんとビー玉の気持ちもフォローしてくれる。彼女の視点をおざなりにすることはない。ボーイ・ミーツ・ガールの定番は外さない。

 ビー玉がふつうの女の子になる場面がうっかり読んでたなら気付かないくらいにさりげなく挿入されてあり、そこにも驚かされる。彼女がビー玉であろうと、人間の女の子であろうとも、あまり気にしてないみたいで、それは作者だけでなく、この小説の主人公をはじめとする幾人かの登場人物たちにも共通する。普通ビー玉が喋ったりしたなら驚くことだろう。なのになんのリアクションもないまま、自然にストーリーは流れて行くのだ。

 そして、ラストのウルトラCである。あれはないだろ、と思う。ふつうなら。でもナオコーラならやり兼ねない。話は完全に逸れている。高校生の恋愛を描く可愛いお話で、定番の文化祭でバンドする、とかいう展開もあるのに、気がつけばなんだか昔話のような大団円を迎える。

 高校生として、どう生きるか。それをナオコーラが指南する。最終的にはファンタジーすれすれで飛行しながら、振り返れば大人である彼女がもう一度高校生をやり直すならどう生きるか、という豊島ミホ『リテイクシックスティーン』の姉妹編のような小説に仕上がった。なかなかすごいことだ。

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