
図書館司書を主人公にした小説は結構あるけど、ここまでたくさんの本を散りばめて、図書館業務をしっかり書き込んだ作品はなかなかないだろう。主人公は半分司書の21歳の青年。18歳から3年、図書館で働いている。高校を卒業してすぐここにきている。通信で大学で勉強、司書の資格を取るために頑張っている。内気な彼にはいつも近くにもうひとりの「友だち」がいる。彼は『VIVANT』の堺雅人のもうひとりの人格と同じ。内面に存在する彼にしか見えない存在。心の中の彼からアドバイスを受けて日々を過ごす。
職場でのさまざまな出来事をさまざまな本を絡めて描く本好きなら大喜びの一冊。シリーズ物らしくこれはすでに第5作。この250ページの小説には68冊もの児童書を中心にさまざまな本(漫画や童話に古典まで)が登場する。
話は3月から始まり翌年の2月までの1年間の出来事を職場の先輩への恋愛と後輩との友情も絡めて12章で綴る。後半戦はストーリーが動くにもかかわらず少し単調すぎてペースダウンするけど、ラストまで飽きさせないし、なかなか楽しく読める。