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映画・演劇のレビュー

宇佐美まこと『誰かがジョーカーをひく』

2024-01-23 03:14:00 | その他

もちろん、誰かがジョーカーをひく、だろうけど、誰もが引きたくはない。そんなの当たり前の話だ。さて、今回の宇佐美まことはノンストップのエンタメ逃亡劇。もうすぐリバイバル上映が始まるリドリー・スコットの傑作映画『テルマ&ルイーズ』を彷彿とさせる。(廣木隆一の『彼女』も)そんな女同士のバディムービーのスタイルである。

たまたま出会った45歳のさえない主婦と28歳のキャバ嬢。3000万円のバッグを盗んで逃亡するけど、当然怖いヤクザや愚連隊が追いかけてくる。ふたりは無事逃げ切れるか。さらにはキャバ嬢の入れ込む気弱なホストや誘拐されたはずの金髪女子高生まで絡んできて、犯行犯グループ鬼炎の追手が迫ってくる。手に汗握る展開。これを映画にしたら面白いのではないか。

さらに後半戦。新たな展開になっていく。ふたりの関係の謎が明らかになり、主人公の主婦はすべてが仕組まれていたことを知ることになる。バディだと一瞬だが信じたキャバ嬢にも裏切られてたったひとりになった彼女の反撃が始まる。さらには最初からさりげなく描かれる鬼炎のリーダーの謎も明らかになり、ラストへと雪崩れ込む。素晴らしいエンタメ小説だ。

『テルマ&ルイーズ』とは少し方向性が変わったけど、構わない。(だいたい『テルマ&ルイーズ』へのオマージュならこの後読む井上荒野の『照子と瑠衣』の方があからさまだし)ただ結末が残念すぎる。あれはないよ、と思った。


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