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映画・演劇のレビュー

『ワンピース エピソード・オブ・アラバスタ』

2007-03-07 23:25:16 | 映画
 『墨攻』と『蒼き狼』を足して2で割った上で『パイレーツ・オブ・サ・カリビアン』をふりかけたような映画。春休みの子供向けアニメとバカにしてたらあかんよ。実は、今書いた3本よりいい映画だったりするからね。スケールの大きい超大作である。こんなにもシンプルな話なのに、飽きさせずどんどん見せていく。そして、ラストでは胸が熱くなる。「俺たちは仲間だからなぁ」なんてルフィーが言って拳を突き上げ仲間の印を見せ付ける後ろ姿が感動的だ。

 映画は、王国軍と反乱軍が国を2分して戦う、そんな不毛の戦争を延々と見せる。どちらが悪いわけでもなく、お互いが純粋にこの国を守るため命を懸けて戦い続ける。先日見た『ルワンダの涙』を彷彿させる。同じ人間同士がなぜこんなふうに憎みあい、殺し合わなくてはならないのか。胸が痛い。そして、ルフィーたちは、この争いを仕組んだ奴ら倒すために立ち上がる。

 それだけの話である。こんなにもシンプルな話だけでラストまで一気に見せてしまうのだ。しかも今回は、しっかりした大作の風格さえ備えた作品に仕上がっている。これだけのスケールの話なのにとてもスピーディーな展開で、たった90分にコンパクトにまとめ、もったいぶった作りもしないのは潔い。

 大切なものを守るためには命を棄てて戦わなくてはならないことがある。それは死ねと言ってるのではなく最後まであきらめず、不毛に見える戦いを続けていくこと。その先に未来に続く可能性がある。CGを多用し、何万人もの人間が殺し合う姿を見せたのもいい。アニメだから可能な表現だ。砂漠に雨が降るラストも美しい。子ども達の心に、しっかり届く映画だ。

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