今年のお正月映画だったアニメ映画。ようやく配信がスタートした。言わずと知れた黒柳徹子の自伝小説の映画化。昭和15年から20年までが描かれる。
トットちゃんは小学校1年から6年。幼い少女から立派な女の子になるまでの6年間。戦争の時代に重なり合う。ともえ学園という素敵な学校に入ったことで彼女の人生が花開くことになる。映画はさらりとしたタッチでそんな彼女の日々を綴る。こんな時代を背景にしているにも関わらずドラマチックな展開はない。静かに彼女の毎日を丁寧に描くだけ。彼女は足が悪い男の子となかよしになる。彼との木登り、プールに誘ったり、運動会では二人三脚で出場する。だけど体の弱い彼は死んでしまう。葬式のシーンは切ない。夏祭りで買ったひよこの死とも重なる。この二つの死が映画のハイライトになっている。
トットちゃんは自由自在な女の子。先生を困らせて前の小学校を退学させられる。新しい学校であるともえ学園にやってきた。校長先生はトットちゃんの話に耳を傾けてくれる。彼女を全面的に受け止めることから始める。彼女はここで初めて自由を手にする。彼女の個性を受け入れて、育てていく。彼女だけではなく、ここにはいろんな子どもたちがいる。当たり前の話だ。そんな子どもたちひとりひとりを認めることから始まる、そんな教育を展開する。お勉強の話はない。もちろんここは学校だから勉強もしていたはず。だけどみんなと遊ぶ場面ばかりが続く。
やがて戦況は悲惨なことになり、トットちゃんは青森に疎開することになる。ラストシーンの汽車から町を見る場面が印象的だ。ここを去っていく。彼女の住んでいた家も建物疎開で取り壊しになる。ともえ学園もまた空襲で全焼する。だけどここで生きた日々はなくならない。
ひとつの時代が終わっていく。幼い日の記憶を目に焼き付けて映画は幕を閉じる。感情的にはならずに客観的にトットちゃんが生きたともえ学園での日々を記録することで映画はさまざまなことを考えさせてくれる。地味だけど素晴らしい映画だった。