2時間10分の長編だ。こういうタイプの映画としては長い。アイドル映画の範疇に収まりそうな内容で、70年代の百恵・友和映画でリメイクされていてもよかったのではないかと今さらだが思う。(『泥だらけの純情』なんかよりこれのほうがあの当時の彼らにはぴったり合う)それにしてもこれが1957年のキネマ旬報ベストテンで第2位にランクインしているということに今見たら驚く。これはそんな映画ではない。当時は社会派映画として位置付けられたのか。でも、これは甘いラブストーリーだ。だから、15歳くらいの頃の僕はこの映画にあんなにも感動したのだろう。
でも今見たら、それほど凄い映画だとはとうてい思えない。昨日見終えた後、実は少しショックだった。あの頃の感動はなんだったのだろうか、と考えてしまった。当時の記録は今はない。あの頃からちゃんと映画感想ノートはつけていたけど、20年くらい前の引っ越しの時、昔の日記と一緒に棄ててしまったのが惜しまれる。まぁ、大したことは書いてないだろうけど。
当時の風俗は今見たら新鮮で、こういう時代だったのかと感心するけど、それは映画の評価とは別問題だ。もちろん、そんなことではなく、これ自体はとてもいい映画だ。今井正監督はメロドラマや青春映画のなかで、さまざまな問題を織り込んで社会の不条理やあるべき姿を描いてきた。『青い山脈』や『また逢う日まで』も好きな映画だ。(でも、今見たらきっとこの映画同様少し評価を下げてしまいそうだけど)不良少年少女を主人公にして彼らが焼け跡の中、あの時代をいかに生きたかが描かれる。原爆症の話へとシフトしていくのは今では少し安直な展開に見えるけど、当時はそうではなかったのだろう。子供だった僕にはそこもまた感動につながったのかもしれない。中原ひとみがとてもけなげでかわいい。周囲の人たちも優しい。だけど、彼らはそれでも生きづらい。少年院や施設の描写も決して彼らを苦しめているようには見えない。身寄りのない孤児を当時の社会はどういうふうに扱っていたのかがここからはわかる(はず)なのだが、なんだか描かれていることがきれいごとみたいでリアリティが感じられない。
ふたりが初めて本格的にデートをする終盤のシーン。お寺の鐘撞台から町を見下ろすシーンは感動的だった。たった1日のささやかなデート。でも、それが彼らにとっては唯一の夢の時間だった。さらには病院で彼女が流す一筋の血。彼は突然の彼女の死を受け止められない。こんな時代だったのだといまさらながら思う。僕が生まれる2年前に作られた作品。もう60年以上前の現実。それがここには描き留められている。