
70分ほどの短い芝居なのだが、とてもよく出来ている。欲張ることなく、シンプル。でも、物凄く丁寧に作られてあるから満足度は高い。アトリエ「空白」という小スペースでの公演で、客席も20席ほど。よくあるカフェ公演に近いものなのだが、こんな贅沢な芝居はなかなかなかろう。アトリエをこの芝居用に改造したようなのだ。2階への階段もつけ直して、壁をぶち抜いたりもした。この芝居のためだけにアトリエ自身を改造しているのだ。だから、ここは、この芝居のためだけの劇場。そう呼んでもいいだろう。たった4ステージ、全回が満席になっても観客は100名に満たない。そんな贅沢。
七三部隊は、後藤七重と三好淑子によるユニットで、2000年『ホシノナイソラノナイホシ』(後にW'IRE作品として再演されたものは見ている)でデビュー。実に15年振りの第2作となる。今回も台本は、サカイヒロト。ただし、演出は林慎一郎に手渡された。サカイさんとは違い、林演出は、とても淡々としている。作品との距離感がいい。あまり、彼女たちに近付き過ぎない。そのほどよい距離感が作品をクールにした。理屈ではなく、事実として目の前の女たちを観察するように描く。必要以上にお話に入り込まない。熱くならないタッチがいい。
半年間、期間限定でここに住むことになった女(後藤七重)。ここは幼児が血まみれになり殺された事件の起きた部屋。ハウスクリーニングのため無料でここを借りた。妊娠7カ月の身重。シングル。一人暮らしをここで始める。なぜ、そうなったかは語られない。ここを斡旋した不動産屋の女(三好淑子)がやってくる。まだ部屋は片付いていない。ダンボールは、半分以上未開封なまま。そんなふたりによる会話劇。6ヶ月間、何事もなく、(あるはずもない)ここで暮らしてくれたらいい。そうすると、問題なく、ここをまた貸し出せる。
しかし、不思議な現象が起きる。自分以外誰もいないはずの部屋なのに、どこかでずっと物音がする。やがて、今いる部屋のドアが開く。もちろん、そんなホラーなことは起こらない。それは彼女が自分の日記に書いた作り話だ。でも、それをネットで公開している。不動産屋の女は当然「やめてくださいよ」とクレームを言う。しかし、果たしてそうなのか。
ふたりの会話は微妙にずれていく。彼女は妊娠しているのではなく、だから、おなかには生まれてくるはずの子供はいない。なぜ、そんな嘘をついたのか。彼女は実は昔ここに住んできた若い夫婦の妻で、幼い子供がいた。だから、妊娠したのはずっと昔のことだ。じゃぁ、今ここにいる彼女は何? ここで起きた事件とは何? 殺人事件の顛末は語られることはない。不動産屋の女は当然事の顛末を知っているはずなのに、しゃべらない。守秘義務がある。しかし、本当は知らないのではないか。
階段を上った後、血まみれになって帰って来る。階上で何があったのか。着ている白い服の胸に「あんどう」と赤いペンで名前を書く。白いチョークで床に「おかえりなさい」と書く。
古ぼけたアーケードの中津商店街。シャッターばかり目立つ寂れた場所。そこにある古い家屋をそのまま使った。ロケーションを最大限に生かす。当然、商店街の通りも借景として取り入れた。通りに向かった2つの窓。リノベーションした小さなアトリエを敢えて殺風景にして挑んだ。何だか懐かしいこの場所で、今とは思えない不思議な場所で、怖いような、でも懐かしい。やがて、発砲スチロールの雪が降る。ここで何があり、少年はどうなったのか。まるでわからないけど、構わない。ふたりの女は今もここにいる。
七三部隊は、後藤七重と三好淑子によるユニットで、2000年『ホシノナイソラノナイホシ』(後にW'IRE作品として再演されたものは見ている)でデビュー。実に15年振りの第2作となる。今回も台本は、サカイヒロト。ただし、演出は林慎一郎に手渡された。サカイさんとは違い、林演出は、とても淡々としている。作品との距離感がいい。あまり、彼女たちに近付き過ぎない。そのほどよい距離感が作品をクールにした。理屈ではなく、事実として目の前の女たちを観察するように描く。必要以上にお話に入り込まない。熱くならないタッチがいい。
半年間、期間限定でここに住むことになった女(後藤七重)。ここは幼児が血まみれになり殺された事件の起きた部屋。ハウスクリーニングのため無料でここを借りた。妊娠7カ月の身重。シングル。一人暮らしをここで始める。なぜ、そうなったかは語られない。ここを斡旋した不動産屋の女(三好淑子)がやってくる。まだ部屋は片付いていない。ダンボールは、半分以上未開封なまま。そんなふたりによる会話劇。6ヶ月間、何事もなく、(あるはずもない)ここで暮らしてくれたらいい。そうすると、問題なく、ここをまた貸し出せる。
しかし、不思議な現象が起きる。自分以外誰もいないはずの部屋なのに、どこかでずっと物音がする。やがて、今いる部屋のドアが開く。もちろん、そんなホラーなことは起こらない。それは彼女が自分の日記に書いた作り話だ。でも、それをネットで公開している。不動産屋の女は当然「やめてくださいよ」とクレームを言う。しかし、果たしてそうなのか。
ふたりの会話は微妙にずれていく。彼女は妊娠しているのではなく、だから、おなかには生まれてくるはずの子供はいない。なぜ、そんな嘘をついたのか。彼女は実は昔ここに住んできた若い夫婦の妻で、幼い子供がいた。だから、妊娠したのはずっと昔のことだ。じゃぁ、今ここにいる彼女は何? ここで起きた事件とは何? 殺人事件の顛末は語られることはない。不動産屋の女は当然事の顛末を知っているはずなのに、しゃべらない。守秘義務がある。しかし、本当は知らないのではないか。
階段を上った後、血まみれになって帰って来る。階上で何があったのか。着ている白い服の胸に「あんどう」と赤いペンで名前を書く。白いチョークで床に「おかえりなさい」と書く。
古ぼけたアーケードの中津商店街。シャッターばかり目立つ寂れた場所。そこにある古い家屋をそのまま使った。ロケーションを最大限に生かす。当然、商店街の通りも借景として取り入れた。通りに向かった2つの窓。リノベーションした小さなアトリエを敢えて殺風景にして挑んだ。何だか懐かしいこの場所で、今とは思えない不思議な場所で、怖いような、でも懐かしい。やがて、発砲スチロールの雪が降る。ここで何があり、少年はどうなったのか。まるでわからないけど、構わない。ふたりの女は今もここにいる。