伊藤計劃プロジェクトの第2弾。3カ月で3本連続公開するというとんでもないプロジェクトだったのだが、本来この11月に公開予定だった『虐殺器官』が公開延期となり、12月のはずだった本作が繰り上げ上映されることになった。(その辺の事情は知らないけど、)
第1作の『屍者の帝国』が思いのほか(失礼!)面白かっただけに今回も期待した。映画化がとても困難を極める難解な原作を、しかもアニメ化するのは、不可能ではないかと思ったが、前作は実に上手く話を展開して、適切に処理した手際の良さがすばらしかった。
スタッフは別チーム(3本とも)ではあるが、本作も期待できると、ワクワクしながら公開を待ったのだが、残念ながらダメだった。まず、この赤を基調としたビジュアルが生かされてない。世界観を確立しなくては、意味をなさない。そのための「赤」だったはずだ。赤は血の色。「ピンク」で彩られる幸福な世界(更にはそれは無味乾燥な「白」に通じる)において一見すると融合可能な赤は、同類のようにも見える。しかし、そうではない。
彼女が地球に還されて、そこで感じる違和感。敢えて軍服である赤を手放さない矜持が、徐々に崩れていく。幸福そうに見えるだけの偽りの世界(病気を克服して人が死なない世界)に風穴を開けるために、親友の死の謎に迫る。ストーリーの展開としては、原作通りなのだが、それがまるでこちらの胸には届かない。彼女の抱える苛立ちがまるで描かれないまま話が展開するから、その底にあるはずの孤独と不安も見えない。
ナレーションを多用した説明に次ぐ説明には辟易する。小難しいことはもっとどんどん端折って、事件の核心に向けて彼女を追いつめていかなくてはならなかった。なのに、そうはしない。いつまでたっても、話は先に進まない。あんなにもテンポがよかった『屍者の帝国』とはまるで違う。もうその点だけでこの映画は失敗している。ストーリーも観念的でシンプルだから、しっかり見せ場を用意して、エンタメしなくてはならなかったはずだ。なのに、先にも書いたような細部の説明ばかり。そんなのは、いらない。
『ハーモニー』という一見優しそうなタイトルの指し示す狂気を体現出来てない。すべての行動だけではなく、心まで管理された世界。平和で調和のとれた穏やかな世界。みんなが幸せそうな笑顔で暮らす偽りの世界に風穴を開けるテロ行為。集団自殺がなぜ起きたのか。その謎に迫るだけではなく、ここではない場所で今も進行中の戦争と対比させることで、世界のシステムがどうなっているのかが、見えてくるはずなのだ。
なのに、戦場が描かれるのは冒頭だけで、それも中心ではなく周辺の出来事。なんだか、すべてが中途半端な話にしかならない。もちろんラストの衝撃的な事実に向けての伏線なのだろうが、言葉で説明されるので、衝撃はインパクトに欠ける。自殺シーンのあのえぐさが欲しいわけではないが、映画としての衝撃は欲しい。
第1作の『屍者の帝国』が思いのほか(失礼!)面白かっただけに今回も期待した。映画化がとても困難を極める難解な原作を、しかもアニメ化するのは、不可能ではないかと思ったが、前作は実に上手く話を展開して、適切に処理した手際の良さがすばらしかった。
スタッフは別チーム(3本とも)ではあるが、本作も期待できると、ワクワクしながら公開を待ったのだが、残念ながらダメだった。まず、この赤を基調としたビジュアルが生かされてない。世界観を確立しなくては、意味をなさない。そのための「赤」だったはずだ。赤は血の色。「ピンク」で彩られる幸福な世界(更にはそれは無味乾燥な「白」に通じる)において一見すると融合可能な赤は、同類のようにも見える。しかし、そうではない。
彼女が地球に還されて、そこで感じる違和感。敢えて軍服である赤を手放さない矜持が、徐々に崩れていく。幸福そうに見えるだけの偽りの世界(病気を克服して人が死なない世界)に風穴を開けるために、親友の死の謎に迫る。ストーリーの展開としては、原作通りなのだが、それがまるでこちらの胸には届かない。彼女の抱える苛立ちがまるで描かれないまま話が展開するから、その底にあるはずの孤独と不安も見えない。
ナレーションを多用した説明に次ぐ説明には辟易する。小難しいことはもっとどんどん端折って、事件の核心に向けて彼女を追いつめていかなくてはならなかった。なのに、そうはしない。いつまでたっても、話は先に進まない。あんなにもテンポがよかった『屍者の帝国』とはまるで違う。もうその点だけでこの映画は失敗している。ストーリーも観念的でシンプルだから、しっかり見せ場を用意して、エンタメしなくてはならなかったはずだ。なのに、先にも書いたような細部の説明ばかり。そんなのは、いらない。
『ハーモニー』という一見優しそうなタイトルの指し示す狂気を体現出来てない。すべての行動だけではなく、心まで管理された世界。平和で調和のとれた穏やかな世界。みんなが幸せそうな笑顔で暮らす偽りの世界に風穴を開けるテロ行為。集団自殺がなぜ起きたのか。その謎に迫るだけではなく、ここではない場所で今も進行中の戦争と対比させることで、世界のシステムがどうなっているのかが、見えてくるはずなのだ。
なのに、戦場が描かれるのは冒頭だけで、それも中心ではなく周辺の出来事。なんだか、すべてが中途半端な話にしかならない。もちろんラストの衝撃的な事実に向けての伏線なのだろうが、言葉で説明されるので、衝撃はインパクトに欠ける。自殺シーンのあのえぐさが欲しいわけではないが、映画としての衝撃は欲しい。