18歳の少年が大人への1歩を踏み出していくまでを描く青春小説なのだが、彼の中の複雑な心境がいくつかの事件を通してさらに困難な事態を招きながら、やがてそのすべてがひとつに解きほぐされていく過程が見事な筆致で綴られていく傑作小説。
他者に対して全く心を開くことなく自分を欺いて生きることしか出来なかった彼が、自ら引き寄せた過ちを通して、たくさんの人たちを傷つけていく。その事実の前で彼は自分のすべてを破滅に導くことすらかまわないと思う。自分が傷つけた少女を守るための愚挙に出ることで思いがけない新展開が生じる。
18歳を少年(あるいは少女)と書くのは少しおかしい気がするが、男(女)と書くにはためらいがある。体も心も充分大人になってるけど、まだ何か足りない。
受験に向けて必死に勉強する姿は読んでいてそれだけで感動的である。ここまでしなくてはセンター試験を勝ち取って、志望校に合格できない。しかも、才能に恵まれた彼がそこまで努力を続けるところにこそこの小説のリアリティーがある。国立の医学部を目指して寸暇を惜しんで勉学に励む。それと同時に彼の周囲の人たちに対して誠実に接して、大人のくだらなさ、人それぞれの思惑に振り回されながらも、彼自身の愚行に端を発した幾つもの問題と向き合っていきながら確かな足取りのもと、彼は大人へと成長していく。
細かなストーリーに対してはここでは一切触れない。読んでもらえればいい。ただ18歳の少年少女が「20年後にもう一度会おう」と約束し、きっとこの子たちは約束を果たすだろう、と信じさせてしまうところに彼らの生に対する強い意志を感じた。恋愛とか友情とか、もうごまんと書かれたあまたの小説や映画で描かれたテーマを、この小説は一番大切な本質の問題として、その核心部分のみをピンポイントで捉え、さらりと示す。このストレートなタイトルに恥じない大傑作である。
この手の小説の最高傑作である山田詠美『ぼくは勉強ができない』に匹敵する作品だ。今、この時期に(これから3年の担任として彼らと一緒に受験に向けて旅立つ時期)この小説と出会えたことを心からうれしく思う。彼らといっしょに僕もまた「大人になる」覚悟だ。
他者に対して全く心を開くことなく自分を欺いて生きることしか出来なかった彼が、自ら引き寄せた過ちを通して、たくさんの人たちを傷つけていく。その事実の前で彼は自分のすべてを破滅に導くことすらかまわないと思う。自分が傷つけた少女を守るための愚挙に出ることで思いがけない新展開が生じる。
18歳を少年(あるいは少女)と書くのは少しおかしい気がするが、男(女)と書くにはためらいがある。体も心も充分大人になってるけど、まだ何か足りない。
受験に向けて必死に勉強する姿は読んでいてそれだけで感動的である。ここまでしなくてはセンター試験を勝ち取って、志望校に合格できない。しかも、才能に恵まれた彼がそこまで努力を続けるところにこそこの小説のリアリティーがある。国立の医学部を目指して寸暇を惜しんで勉学に励む。それと同時に彼の周囲の人たちに対して誠実に接して、大人のくだらなさ、人それぞれの思惑に振り回されながらも、彼自身の愚行に端を発した幾つもの問題と向き合っていきながら確かな足取りのもと、彼は大人へと成長していく。
細かなストーリーに対してはここでは一切触れない。読んでもらえればいい。ただ18歳の少年少女が「20年後にもう一度会おう」と約束し、きっとこの子たちは約束を果たすだろう、と信じさせてしまうところに彼らの生に対する強い意志を感じた。恋愛とか友情とか、もうごまんと書かれたあまたの小説や映画で描かれたテーマを、この小説は一番大切な本質の問題として、その核心部分のみをピンポイントで捉え、さらりと示す。このストレートなタイトルに恥じない大傑作である。
この手の小説の最高傑作である山田詠美『ぼくは勉強ができない』に匹敵する作品だ。今、この時期に(これから3年の担任として彼らと一緒に受験に向けて旅立つ時期)この小説と出会えたことを心からうれしく思う。彼らといっしょに僕もまた「大人になる」覚悟だ。