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映画・演劇のレビュー

ボクらの夢のエンゲキ企画『南へ』

2025-03-16 17:40:00 | 演劇
近大の学生たちが野田MAPの作品に挑む。初演は妻夫木聡と蒼井優が主演した。今回ヒロインのあまねを演じた三好愛美がとてもいい。お話は彼女の暴走から始まる。演出,主演の福本康介はテンポのいい野田芝居を自分たちに出来るレベルで、無理せず再現を試みる。こんな素敵な芝居が無料で見ることができるってなんだか幸せな気分。

もちろん決してこれが凄い作品だ、とかいうわけではないけど、彼らはこの難しい作品に挑みしっかり作っている。セットも衣装も当然豪華なものではないが、低予算でもきちんと機能している。シンプルな舞台美術もいい。作り手の生真面目さが気持ちいい。12人に及ぶ役者たちも健闘している。さまざまなキャラクターを演じ分けスピード感のある芝居をしっかり展開させて1時間50分を滞ることなく一気に見せていく。

無事山(富士山)観測所と麓の旅館を舞台にして、自殺しようとしていたあまねと、この観測所に新しく赴任してきた南のり平を中心にしたドラマが描かれる。信じるか、信じないか。火山噴火が起きるか否か。お話はここでの日常から始まり、非日常の存在の来訪(天皇が来る)という事から時間を行き来する壮大なドラマに。

南へ、向かうのは何故か。北から、来たから向かう先は南になること。自らの存在を隠す女と自分が誰なのかわからなくなっていく男。さまざまな「何か」が錯綜していき大団円を迎える。

これだけのスケールのお芝居をきちんと作り上げた彼らに拍手。

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