
今頃になってこの作品が単独で一冊の本となって発売された。初期の村上春樹の傑作短編集『中国行きのスロウボート』に収められた『午後の最後の芝生』である。安西水丸によるたくさんの挿し絵とのコラボ。
42年前の作品を再びこういう形で出版する。村上春樹と10年前に亡くなっている安西水丸との黄金コンビによるコラボが実現する。
水丸さんによる絵がいい。久しぶりに読んだ小説は(出版された時以来だからもう40年以上前!)今と変わりない村上春樹。(当然かぁ)
淡いタッチで青年の孤独と50代に見える女性の喪失感を描く。もちろんのことだけど説明はない。(いらない)
芝刈りに訪れた家。4時間かけて丁寧な作業をする。大学生の私。その家の女主人は作業を終えた彼を労い家に入れる。彼女は死んだ娘の部屋に彼を導く。
それだけの話。それが何を意味するのか、を考えることが大事なのではない。そこにある寂しさに触れるだけでいい。
久しぶりに村上春樹の旧作を読んでなんだか懐かしい。