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映画・演劇のレビュー

高野和明『踏切の幽霊』

2023-08-01 17:03:00 | その他

ミステリーとホラーの融合なんていうアイデア自体は悪くない。だけど、まるで怖くないんだから、これではまずいと思う。なんとこれは直木賞候補にもなっているようだ。

前半がかなりツラい。幽霊話と犯人追求があまりしっくりいかないから、読んでいてバカバカしくなる。幽霊の謎解き、殺人の謎解きのふたつが上手く重なっていかず、話にリアリティがない。殺された女の秘密になかなか迫れないのもまどろっこしい。一度は途中までで放棄しようかと思ったが、既に半分以上読んでいるから、我慢して読み続けた。
 
終盤になってまさかの女性霊媒師の登場から一気にギアが上がる。事件の現場に行き、幽霊を呼び寄せて犯人の謎解きに迫ることになる。話としてはそれはミステリーとしてあかんやろ、という展開だけどそこから記者と幽霊が共同して殺人犯人に立ち向かう話となっていく。まさかの大逆転には笑うしかない。
 
ネタバレになるけど、殺されて幽霊になった女が、自分を殺した男を殺す話になるなんて、ミステリーとしては邪道だが、溜飲が下がる。彼は死んだ者が見える。いや、見えないけど感じられる。だから、死者からの電話にも対応できる。彼女からのメッセージを受け止め、事件と向き合っていける。それは実は亡くなった妻の導きでもあったというラストもいい。最終的には上手くまとまっている。

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