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映画・演劇のレビュー

『シビルウォー アメリカ最後の日』

2024-10-09 18:53:00 | 映画

これは『エクス・マキナ』や『MEN 同じ顔の男たち』のアレックス・ガーランドが監督・脚本したK24による超大作映画である。だけどよくある娯楽大作ではない。戦争映画だけど、派手な戦闘シーンからは遠く離れた映画である。

だけどこの不気味さは悪夢としか言いようがない。荒唐無稽な話ではない。リアル過ぎて怖いのだ。こんな未来がある。確実にこの先すぐそこまで来ている。これは近未来のアメリカの現実かもしれない。いつまでも続くウクライナの戦争。ガザでの戦乱。イスラエルの暴走。それは遠くの出来事ではない。

アメリカで内乱が起こり戦火は全土に波及する。もう誰が誰と戦っているのかもわからない。政府は反乱軍を抑えることは出来ない。大統領の惨殺までが描かれるけど、そんなことで終わらないだろう。ここに描かれるものは大戦争の序章でしかない。

ワシントンDCに向けてのあるジャーナリストの旅が描かれる。陥落寸前のホワイトハウスに行き大統領からの最後のインタビューを取るために。だけどそれは簡単ではない。旅の途上ではさまざまな困難が待ち受ける。戦闘はあらゆる場所に波及している。何がなんだかわからない混迷が待ち受ける。

ホラー映画ではないけど、ほとんどこれはホラーだ。しかも戦場はベトナムではない。合衆国本土である。『地獄の黙示録』のラストから続く地獄が自国で繰り広げられる。もちろんこれは海の向こうのアメリカの話で終わらないことは明白であろう。

この今という時代の気分が色濃く反映されたドキュメンタリータッチの映画は先日見た韓国映画『ソウルの春』にも通じる。あれは40数年前の韓国ソウルで起きた現実である。そしてこれは近い未来のアメリカで起きて欲しくない現実を描く映画だ。こんな狂った映画が作られる。もちろん狂っているのは我々人間たちの方だ。


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