金子修介監督の久々の新作である。もちろん久々と言いつつも実は何本も公開されている。でも、僕はもう見ていない。それだけなのだけど、実はそれだけではない。21世紀に入って小さい規模の彼らしくない映画はたくさん作られている。でも、それはまるで彼らしくはない映画ばかりだ。きっと自分の企画ではないのだろう。与えられたものを引き受けただけ。そんな気がする。僕は自由に彼らしい映画を見たい。だから、がっかりしたくはないから、最近は見ていない、ということなのだ。
メジャー大作を多数手掛けて確かな手腕を発揮してきた彼がどうして近年そういう仕事を手掛けられなくなったのか。いろんな事情があるのだろうけど、なんだか寂しい。『あずみ』2部作以降、駄目になった。『デスノート』はまだギリギリ許せるけど、それ以降の作品は納得いかない。だから彼はもう20年も低迷していることになる。
もちろん初期のロマンポルノからずっと彼の作品を追いかけ見てきたし、大作映画が彼の本領とも思わない。『みんなあげちゃう』を見た時の感動は今でも鮮やかだ。小規模作品であろうとも、いや、そこにこそ彼らしい個性を発揮した傑作はこれまで多数あった。『1999年の夏休み』と『ガメラ』3部作がキャリアの頂点だとは思いたくない。過去の監督だなんて言いたくもない。
4年ぶりの新作である。なんと寺田農主演の時代劇大作だ。でも、果たしてこれを大作映画と呼んでいいものやら、躊躇う。こんな企画を彼がほんとうにやりたかったのか? そんなわけないだろ、と勝手に思う。歴史美術研究家の宮下玄覇共同監督というクレジットもなんだか胡散臭いものを感じた。でも、キネマ旬報の特集を読んで、自分の目で確かめたいと思い恐々劇場に行く。
見始めて、やっぱりな、と思う。こういうことではないかと危惧していた。で、その通りの映画だった。正直言おう。これは彼の映画ではない。彼が撮りたい映画はこんなものではない。職人監督としてどんな題材でも器用に熟すことを証明するため引き受けた、だなんて思いたくはない。映画が好きだし、映画を撮りたいという想いはわかるけど、こんな映画を彼が作りたかったとは信じたくはない。もちろん、これはただの1ファンの勝手な言いぐさなので、こんな感想は無視して貰えたならそれでいいけど、でも、少なくとも僕は嫌だ、と思ったことだけは伝えたい。大好きだった金子修介監督のキャリアにこんな映画が書き加えられるなんて、納得できない。
ほんとうにごめんなさい。金子監督以下、この映画のスタッフ、キャストの頑張りは確かに伝わる。少ない予算の中でやれる限りのことをしている。確かな覚悟を持ってこの映画作りに挑んでいる。それは確かだ。そして娯楽映画ではなく、使命感を抱いて歴史の真実に迫ろうとしている映画なのかもしれない。だけど、僕は見ながら、なんともいいようのない虚しさを感じた。あの『ガメラ』シリーズを作り、『ゴジラ、モスラ、キングギドラ 大怪獣総攻撃」を手掛けた彼が、作る映画ではない。