公開から2か月が過ぎてようやくこの映画を見たのだが、なんだか残念で、感想を書く気がしなかったのでしばらくほっていた。大好きな三木孝浩監督の映画にハズレなし、なのだけどこの手の恋愛映画なら、もしかしたら微妙、とは予想もしたけど、それが的中した感じだ。
以前よく似たパターンの『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が思ったほどじゃなかったという先例がある。原作小説がかなり面白いのに、映画はそこまでには至らないというのはよくあるパターンなのだが、三木孝浩なのに、そういうことがあるのは、どうしてか。彼は日常のスケッチが上手いから、そこに非日常が影を指すとさらなる緊張が高まるはずなのに、そうはならない。
この先死んでいく人が透けて見える男が主人公。(何とも、微妙な設定だ)そんな男を神木隆之介が演じる。彼がひとりの女性(有村架純)を救う。ふたりは恋に落ちる。だけど、再び彼女が透けていく。さぁ、どうするか。終盤の展開には唖然とする。それはないよ、と思う。そこまでのところはなんとかついて行けるだけに惜しい。
荒唐無稽な話に説得力をもたせるには、ディテールの上手さで攻めるしかない。だがこれは恋愛映画としても中途半端だし、もちろんSF映画というわけでもないし、ここに描かれる超常現象が、彼らの生活にどういう影響を与え、そこからどこに向かうことになるのかが明確にはならない。荒唐無稽から遠く離れたリアルさがあると、そこが魅力になるはずなのに、そうはならないのだ。相手を愛して、信じることを通して、どこにたどり着くのか。映画が描くべきことはもっと個人的な問題でいい。彼女を助けたいという想いが、もっとささやかな事態へと至り、それが感動に至るべきないのだ。自分を犠牲にして電車を止めるなんていう派手な結末は要らない。