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映画・演劇のレビュー

『悪のクロニクル』『ピエロがお前を嘲笑う』

2016-05-12 20:28:54 | 映画

 

『悪のクロニクル』は実によく出来た映画だ。こんなにも面白い映画が日本では未公開でDVDスルーになる。2転3転するストーリーテリングの見事さ。最後のどんでん返しなんて、それはないわぁ、と思うほど見事。最初はなんだかなぁ、と思う。だって、あの状況なのだから正当防衛になるはずだし、現職の警官が殺人事件を隠ぺいするか? いくら出世がかかっていても、絶対にばれる。ばれたなら、いい訳はきかないはずだ。正直に言えば、こんなことにはならないはず。しかも、最初の殺人を隠すために、どんどん嘘で塗りこめていくことになる。まぁ、よくあるパターンかもしれない。

20年前の殺人事件の犯人を巡るお話から、始まる。すぐに現在になり、犯人にされた男の息子が大人になって真犯人を探しだし、死んだ父親に対する復讐する、なんていうお話。でも、そんなネタは最後まで、前面には出ない。最初は誰かに嵌められた刑事が犯人を捜し出す話で、あの子供が彼ではないかと思わせる。でも、実は、という展開。無理はあるけど、テンポよく飽きさせない。

『ピエロがお前を嘲笑う』はドイツ映画だが、あまりの面白さからアメリカでリメイクされるようだ。まぁアメリカ映画がよくやる安易なパターン。この映画自体もネット犯罪を描く最近ではよくあるパターンの映画でもある。これもストーリーが2転3転するジェットコースタームービー。どんでん返しの応酬で、あれよ、あれよと言う間に、どんどん流されていく。そして、ラストでは、そんなバカな、の大どんでん返しが。

 

気持ちよく騙されるのではない。そんなのありか、と少しズルイとも思うけど、それは思いつかなかったし、と納得する。悪くはない。ただ、これにしても、『悪のクロニクル』にしても、確かに上手く作られているけど、作品自体に奥行きは感じられない。お話を作り上げることばかりに腐心して人間を描き切れていないのが気になる。

まぁ、そんなことを言うのが古臭いと言われるかもしれないけど、(楽しめたなら十分という考えもわからないではないけど)でも、やはり上手く騙されたということよりも、感動が欲しい。それは重い話でなくてもいい。ジョージ・ロイ・ヒル監督の『スティング』を見た時のような気分、といえばわかってもらえるか。「やられたなぁ」と思いつつも、もう一度見たくなるような映画。それは仕掛けの面白さでは終わらない、ということだ。惜しいけど、この2本の映画はそこまでは至らない。

 


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