金子修介監督が久々にメジャーで撮る新作だ。メジャー、とはいっても、それほどの大作ではない。それどころか、小規模のプログラムピクチャーだ。昔なら2本立上映の1本でしかない。そんなスケールの映画なのに、製作の主幹はTV朝日で、東映他が共同で作っている。全国東映系公開作品だ。昔ならTV局が製作する映画はスケールの大きな大作というのが定番だったのに、今じゃ、こんなスケールの映画まで生産している。まぁ、作ったらすぐTVで放映できるからちょっとしたTV映画を作る感じで(2時間ドラマね)作るのだろう。あまり、宣伝も頑張らないから、公開から2週間目でもうガラガラ。というか、最初からまるで不入り。だって、この企画に見たいと思わせるものは何もないのだから。僕だって金子修介じゃなかったら、パスしていた。
それほどに、金子監督は信頼している。『みんなあげちゃう』を見てファンになった。それからはほぼ全作を見ている。『1999年の夏休み』や『いたずらロリータ 後ろからバージン』の頃からずっと好きなのだ。なのに、最近まるで精彩を欠く。もう彼の時代ではなくなったのだろう。自分がしたい企画なんてまわってこないし、何をやっても以前のような新鮮さはない。
今回久々の東映映画で、そこそこの予算で、美少女(杉咲花と木村文乃)も出てくるし、野村萬斎初の現代劇なんていう売りもあるけど、そんなのが宣伝になるのか? でも、野村萬斎の出た映画は今までどれもヒットしているし、今回はどうだ? なんて、まぁ、あまり期待はしないで見始めたのだが、なんだぁ、これは!
啞然とする。こんな杜撰な映画が現代にあるのか。お話もバカバカしいけど台本が酷すぎる。この惨い台本を書いたのは古沢良太。(彼が脚本だということの方が、これが金子映画であることなんかより、ずっと売りになっている!)何なんだろうか? 冗談じゃない。
残留思念を読みとる力のある男がそれを武器にして連続殺人の犯人を捕まえる、なんていう2時間ドラマのような安易なお話なのだが、それを映画としてうまく作れたなら、それはそれで楽しめるはずなのだ。何度も言うけど金子修介なんだから、絶対面白い映画になる。そう信じた僕が愚かだった。
まるでドキドキさせない。ダラダラさせるばかりの雑な展開。嘘くさい話なんだから、話術で騙しながら、不思議なお話の世界に、乗せて下さいよ。なのに、ただただ嘘くさいばかりで最初から最後まで、まるで乗れない。ないない、としか言えない。だいたいあんな漫才コンビないでしょ。あんな芸では笑えるはずもない。相方を本職の漫才師だった宮迫(博之)が、やるんだから、もう少しなんとかならなかったものなのか? 久々に劇場で倒れそうになった。