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映画・演劇のレビュー

村上春樹『1Q84 Book2』

2009-10-16 20:22:38 | その他
 まさかこんなふうな展開になるだなんて思いもしなかった。book1を読み終えた時には、この先も同じペースで話が進み、もっと緩やかな展開をするのではないか、と予想したのだが、いやぁ、これには参った。しかも、そのくせラストはあんな中途半端なままで終わるだなんて。

 このbook2は思いがけない急展開を見せる。だが、それが途中で減速し、気がつけばいろんな問題を置き去りにしたままで、唐突に終わる。青豆は果たして高速道路で死んでしまったのか。最後で天吾の前に現れた空気さなぎが10歳の青豆であることにどんな意味があるのか。わからないままだ。だいたい教団のことも、リトル・ピープルのこともおざなりにされたままではないか。これだけの長編小説なのに、こんなにもすべてを置き去りにして、勝手に終わってしまっていいのだろうか。

 まぁ、僕はなんでも受け入れられるからこれでもいいのだが、たぶん世間は納得しないだろう。まぁ、村上春樹は世間なんか考えて書いていないだろうから、彼がこれでいいのならなんでもokなのだが。

 2人が最後まで出逢わないということは十分に予測できたが、教団の内部にまで話がまるで及ばない、だなんて思いもしなかった。教祖がふかえりの父親で青豆が彼を殺すという展開が、こんなに早く起きるのか、というのも驚きだった。まぁ、一読者の予想なんかどうでもいいことなのだ。ただ、まるで話が読めないにもかかわらず、それがあまりスリリングではないのも以外だった。まるで話は進まないのにそれがなぜかスリリングだ、というのが、この小説の魅力だったのに、book1とbook2では、こんなにもテイストが違う。正直言うと、この後半はあまりおもしろくはなかった。前半があんなに魅力的なのになぜだろうか。

 2人の周囲の人たちが消えていく。まるでなんの説明も為されないままに。あっけないくらいに、知らないまま、気付くと出てこなくなるのだ。もともとあまり彼らは人とは付き合わない人たちだった。だから、この小説が終わるときには、もう誰もいない。

 何かを語るのではなく、ただ2人の周囲に起きた出来事を描く。運命の糸で結ばれた2人はその糸に導かれて彷徨う。この世界には彼らを必要とする人間は、誰もいない。お互い以外は。なのにこんなにも求めているのに2人は出逢えない。これはただ、それだけの小説なのかも知れない。

 結果的にこの小説は『10歳』という時間についてのお話になる。天吾と青豆が手をつないだ日。ふかえりが教団を抜け出した日。拘りの原点はそこにある。そこから、全ては始まり終わる。

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