81年札幌。大学生。喫茶店でバイトしている。バイト先と学校の往復だけ。すべての時間がバイトと授業で埋まる。でも、そんな毎日が嫌ではない。バイト先は楽しい。仲間たちと過ごす時間は心地よい。お客さんは常連がたくさんいて、彼らと話すのも、生活の一部で、仕事と学校だけで、十分なのだ。それ以上何も望まない。今は。ずっとこんな幸福な日々が続くわけはない。3年になって、4年になると就職活動をするし、ここも辞める。先輩たちもそうしてここから卒業した。
そんな日常に亀裂が生じる。いきなり7年振りで姉がやってくる。彼の下宿に泊まり、しばらく同居することになる。なぜ、姉が東京からここに来たか。何かがあったはずだけど、しゃべらないから、聞かない。人生のホリディだ。彼女にとって。
会社を辞めたのではない。長期の休暇を取り、北海道に戻ってきた。でも、実家には帰らない。父との確執がある。でも、大人になった彼女にはもうわかっている。弟である僕は姉と同居することで、今あるこの時間、仲間たちとの交流、その幸福を改めて知る。
そんな話だ。いかにも、小路さんらしい。少し感傷的で、(それはちょっと自伝的な話だろうから)でも、ドライなタッチに貫く。(甘いハートウォーミングにはしない)こんな時代があった、という感じで描かれる。80年代の雰囲気がちゃんと描かれるから心地よい。もう30年以上前の気分が再現されてあり、懐かしい。同世代だからついついそんなところに共感してしまうのだ。