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エイチエムピー・シアターカンパニーの笠井さんの演出、指導による作品。昨年末の『友達』に続く近大の学生による授業作品なのだが、これが侮れない。ダブルキャストで僕が見たのは歌組。主人公の乱歩の妻隆子を演じた川畑三琴と乱歩の清水彩雲がいい。当日パンフを見ると文組のふたりと違って歌組のふたりはぽっちゃりしているけど、そこも乱歩夫婦のキャラクターにピッタリだと思う。若い頃を演じたふたりとの落差がいい。(文組のふたりのバージョンも見たかったけど)若いふたりは傀儡の人形。必ずしも現実ではない。過去と人形劇の微妙な違いも含めて、失踪して今はここにはいない乱歩への隆子の想いが過去と現在を往還しながら描かれる。
主役のふたりだけでなく、20人に及ぶキャストたちは2時間10分の大作を見事に走り抜けた。舞台美術もとてもいい。シンプルだけどとても趣味がいい。決して華美ではなく、だけど乱歩の闇を丁寧に描くのにこちらも適切。
お話は書けなくなった乱歩の失踪から始まる。妻の隆子は迷い込んだ浅草紅座の傀儡師による人形劇によって、乱歩との出会いから過去を追体験していくというスタイル。現実と幻想が無い混ぜになった世界を彷徨い、出会いの日に至る。恋文を貰った日のことを描くラストシーンが爽やか。