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映画・演劇のレビュー

『異端の純愛』

2025-02-01 19:18:00 | 映画
これまで乱作多作だった井口昇の2023年作品。だけど、この作品の後、新作は途絶えている。これは彼にとってひとつのレジェンド的な作品である。『恋する幼虫』はなかなかよかった。だけど後の作品は駄作ばかりだ、と思っていたが、あの大傑作『惡の華』(2019)を作ったことで彼は僕からの信頼を勝ち取った。(笑)

その後、期待して新作を待ったが、なかなかなかった。そしてようやくこの作品である。これが久々の井口監督作品。だが、これはまるでいただけない安っぽい映画だ。第1話を見たところでもう止めようと思ったが、我慢して見た。2話もくだらないしチープすぎて耐え難い。

これは井口が企画、プロデュースも兼ねてクラウドファンディングで作り上げた作品である。低予算だが妥協はない。本当に作りたいものを作った。だから、最後まで見てよかった。

3話である。まさかの大逆転勝利。というか彼の本領発揮。冒頭の井口本人が演じる主人公の子ども時代。あの不気味な顔に引き込まれる。成人した後の、まるで女の子のような姿との落差(なのに納得する)に魅了され、お話の呆れるくらいにバカバカしさにドン引きする。だけどふたりの純愛に再び魅了される。食べたものはウンコになる。

『春琴抄』もどきの結末まで。井口ワールド全開。お腹が痛くなってウンコの噴出が抑えきれないで身悶えする愛する女の子を見守る男の子なんていう図式、あり得ない。だけど井口昇ならあり得る。彼はこれから純愛につなげるのだ。セックスを描かないで変態的行為も描かない。あくまでもこれは純愛。だけど世間からは異端の純愛だと言われるだろう。

ドン引きするかもしれないけど、これは傑作『惡の華』の後、あの先にたどり着いた映画として見逃してはならない作品である。見捨てず最後まで見てよかった。

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