中学1年から3年までの3年間、3人の少女たちの小さな3つのお話。とても微妙な年齢の、幼いけれども真摯な気持ちが丁寧に描かれてある。児童文学出身の作家によるティーン小説には時々すごくよくできたものがあって見逃せない。彼らがきちんと子どもと向き合うから、その姿勢は大人を描いてもぶれない。今ではもうなくなってしまったが、集英社のコバルト文庫の流れを組むジュニア小説の伝統はこういうふうに細々とだが今も続いている。そこから極上のものを時々セレクトして読めたならいいなぁと思う。なかなか上手くは捜せないけど。
この小説も、表紙のカバーイラストがあまりにアニメ的でちょっと大人が読むには気後れするが、無理してでも読んでみてよかった。これは江國香織なんかの小説にも通じる。
もちろんこんなのは、ただのたわいない初恋物語でしかないではないかと簡単に切り棄てることも可能なくらいにささやかな小説である。しかし、忘れてしまいそうになっていた大切なものが、ここには確かにある。ティーンエイジ最初の頃、まだ大人ではなく、子どもだけれども、子どもは子どもなりに一生懸命自分や周囲の人たちのことを考え、人間関係に苦しみながら生きていた。そんな姿が胸にしみてくる。
『バースディパイ』はお母さんから自分の誕生日を忘れられたと思った女の子の話。『ホタルの基地』は、幼い弟たちとホタルを見に行き、そこで気になるクラスメートの男の子と出会う話。そして、最後の『沢山さんの恋』はクラスメートの男の子を見つめる2人の女の子の話。
こういう幼い恋って、もう今ではあまりに遠すぎて忘れてしまいそうになっているけど、あの頃の僕たちがとても大事にしていた感情がここには詰まっている。それをもうほとんど忘れてしまっているのが悲しい。この作品集に出てくる3人の主人公の女の子たちの前に立つ3人の男の子たちはとても優しい。女の子にとって彼らは理想の男子であろう。でもなかなかこんな子たちは現実にはいない。ジュニア小説の中にだけ存在する理想の男子像であろう。だが、それをただのメルヘンだと片付けるのはなんだか悔しい。現実の中にも彼らは存在すると信じたい。
今を生きるふつうの女の子たちが、子供の頃にこういう夢を見て、こんなお話を心の中に育みながら、素直な大人になっていってもらいたいなぁ、と願う。
この小説も、表紙のカバーイラストがあまりにアニメ的でちょっと大人が読むには気後れするが、無理してでも読んでみてよかった。これは江國香織なんかの小説にも通じる。
もちろんこんなのは、ただのたわいない初恋物語でしかないではないかと簡単に切り棄てることも可能なくらいにささやかな小説である。しかし、忘れてしまいそうになっていた大切なものが、ここには確かにある。ティーンエイジ最初の頃、まだ大人ではなく、子どもだけれども、子どもは子どもなりに一生懸命自分や周囲の人たちのことを考え、人間関係に苦しみながら生きていた。そんな姿が胸にしみてくる。
『バースディパイ』はお母さんから自分の誕生日を忘れられたと思った女の子の話。『ホタルの基地』は、幼い弟たちとホタルを見に行き、そこで気になるクラスメートの男の子と出会う話。そして、最後の『沢山さんの恋』はクラスメートの男の子を見つめる2人の女の子の話。
こういう幼い恋って、もう今ではあまりに遠すぎて忘れてしまいそうになっているけど、あの頃の僕たちがとても大事にしていた感情がここには詰まっている。それをもうほとんど忘れてしまっているのが悲しい。この作品集に出てくる3人の主人公の女の子たちの前に立つ3人の男の子たちはとても優しい。女の子にとって彼らは理想の男子であろう。でもなかなかこんな子たちは現実にはいない。ジュニア小説の中にだけ存在する理想の男子像であろう。だが、それをただのメルヘンだと片付けるのはなんだか悔しい。現実の中にも彼らは存在すると信じたい。
今を生きるふつうの女の子たちが、子供の頃にこういう夢を見て、こんなお話を心の中に育みながら、素直な大人になっていってもらいたいなぁ、と願う。
楽しみです。
いつもわかりやすい書評ありがとうございます。