日本人監督の竹内亮が捉えた中国。10年以上前に作ったTVドキュメンタリー番組でやり残したことをやり遂げるために日本を離れて中国で暮らし映画を作る。そんな人がいたってだけで興味深い。もちろん映画自体も実に面白いし。実はあまり期待してなかっただけにこれは思いもしない拾い物だったのだ。見れてよかった。
たった10年で中国は大きく変わった。これはそのことを実感させられる映画である。今回の2020年からの映像に2010年の映像を並行して見せてくれる。その対比が圧巻である。たった10年でこんなにも変わったことが実感できる。中国の躍進は凄まじい。
僕が初めて中国に行ったのは北京五輪前の2006年のことだ。ジャ・ジャンクーの『世界』という映画を見てショックを受けた。大変なことが起きていると思った。だから絶対に今、中国を見なくてはならないと思ったのだ。世界の中心を見ること、世界が大きく変わる時代を目撃すること。
あの頃の北京はまだえげつないところだった。空港は暗いし、デパートの店員は横柄だし、トイレは恐るべき汚なさ。その後、北京五輪後の2009年再訪した北京は様変わりしていた。僕が中国を見た最後の年(2014年に上海周辺に行った)はもう10年くらい前になる。
あれから10年。この映画が描く2021〜2023年の中国と,以前竹内が撮った2010年の落差も凄いけど北京五輪以前と以後の落差は壮絶だった。
上海からチベットまで。以前出会った人たちとの再会、立ち寄った街や村をもう一度巡り、長江の最初の源流に至る6300キロに及ぶ旅。これは長江源流をたどる旅のドキュメンタリーというよりも、中国という国の今ある姿を描く映画。シャングリラの少女とのエピソードがいい。18歳の彼女が28歳になり、夢を叶えて立派な民宿のオーナーになっているって驚き。