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吉田修一の『パレード』が映画化され、間もなく公開される。だが、ほんとうのお楽しみはこれからだ。なんと彼の最高傑作『悪人』も映画化されているのである。あの長編がどんな映画になり甦るのか、期待で今から眠れない。(最近、よく寝てるからちょうどいいか)
さて、彼の新作である。なんと今回はよくある青春小説だ。大学生になり地方から上京してきた青年がさまざまな人たちと出会い、青春を謳歌する。漱石の『三四郎』の時代からの定番である。こういう教養小説は数限りなく書かれてきた。傑作も多い。このジャンルに吉田修一が取り組むなんて思いもしなかった。80年代に設定したのは自分が生きた時代だからか。誰もが自らの青春時代を一度は回顧する。ただし彼のことだからただの感傷小説にはならない。
400ページ以上の長編なのに、一気に読み終えてしまった。読み終わるのが惜しかった。ずっとこの時間の中でまどろんでいたかった。だがそんなことは許されない。本を閉じた時、自分の18歳からの1年間を思い返していた。なんだか気恥かしいし、甘酸っぱい気分だ。感傷に耽ったのではない。世之介という時代錯誤の名前を付けられた青年とともに彼の1年間を並走し、誰の中にもある大事なものをもう一度噛みしめただけだ。これは僕たちの小説である。
何物でもない「僕ら」がつまらないことを繰り返しながら、成長していく姿は美しい。この単純なお話に今に自分がこんなにも素直にのめり込めたなんて奇跡だ。曽野綾子の『太郎物語』や宮本輝の『青が散る』を子供の頃(もう30年も前の話だ)に読んだ時の想いがよみがえる。
バブルに頃を舞台にして、田舎から出てきた世之介が、出会う人たちとのやりとりは、とてもリアルだ。お話を追いかけるのではなく彼らと世之介がどうかかわりあっていくのかが楽しい。20年後の彼らの姿をエピソードとして、途中にインサートさせていくのもいい。これがかって生きた時代の話だという当たり前のことを常に思い出させる。作品とのその距離感も素晴らしい。
さて、彼の新作である。なんと今回はよくある青春小説だ。大学生になり地方から上京してきた青年がさまざまな人たちと出会い、青春を謳歌する。漱石の『三四郎』の時代からの定番である。こういう教養小説は数限りなく書かれてきた。傑作も多い。このジャンルに吉田修一が取り組むなんて思いもしなかった。80年代に設定したのは自分が生きた時代だからか。誰もが自らの青春時代を一度は回顧する。ただし彼のことだからただの感傷小説にはならない。
400ページ以上の長編なのに、一気に読み終えてしまった。読み終わるのが惜しかった。ずっとこの時間の中でまどろんでいたかった。だがそんなことは許されない。本を閉じた時、自分の18歳からの1年間を思い返していた。なんだか気恥かしいし、甘酸っぱい気分だ。感傷に耽ったのではない。世之介という時代錯誤の名前を付けられた青年とともに彼の1年間を並走し、誰の中にもある大事なものをもう一度噛みしめただけだ。これは僕たちの小説である。
何物でもない「僕ら」がつまらないことを繰り返しながら、成長していく姿は美しい。この単純なお話に今に自分がこんなにも素直にのめり込めたなんて奇跡だ。曽野綾子の『太郎物語』や宮本輝の『青が散る』を子供の頃(もう30年も前の話だ)に読んだ時の想いがよみがえる。
バブルに頃を舞台にして、田舎から出てきた世之介が、出会う人たちとのやりとりは、とてもリアルだ。お話を追いかけるのではなく彼らと世之介がどうかかわりあっていくのかが楽しい。20年後の彼らの姿をエピソードとして、途中にインサートさせていくのもいい。これがかって生きた時代の話だという当たり前のことを常に思い出させる。作品とのその距離感も素晴らしい。