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後半は思ったほど怖くなかった。もうこれ以上の恐怖はないからだ。あるのは予定調和の虚しさだけ。こんなふうにして生きてきた自分に対して唾を吐きかけたくなる。
この作品のふたりの主人公たちの末路を静かに見守る。穏やかなラストまで。
これは主人公のふたりをこれ以上追い詰めて破滅させるためのお話ではないからだ。
僕たちは絶対にこうなってはならない。自戒の念を込めて最後まで読む。もちろんもう既に彼らと同じくらいのことをしでかして生きてきてしまったのだろうが。
だからこそ、ここからでもまだやり直すことはできると信じたい。無意識のうちに何かをしでかして生きている。僕たちは自分だけは大丈夫とたかを括っている。そんな愚かさを思い知る。だけどその先の未来を大切にするために、この作品の救いはある。
女性に対して日本の男たちがしてきたことを改めて見つめ直す小説が最近多いな、と感じる、まぁたまたま僕が読む本がそうだということかもしれないけど。ただ無意識の行為って怖い。自分たちにはわからないままやり過ごしている。パワハラやセクハラはこの国では当たり前のことで、正しいこと、とか、許容範囲だとか、思われてきたのだろう。もちろんそれを逆手に取った甘えも許さないだろう。しっかり目の前の現実を見て歩いて行こう。