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たった95分で描く72年9月5日のミュンヘン五輪でのテロ。映画は無駄のない適切な見せ方で報道のあり方を問う。アメリカのABCが生放送で独占世界中継をしたテロ事件の舞台裏のドキュメントである。
50年以上前の出来事を今再び問う。ちょうど同じようにテロ事件をリアルタイムで生放送することを描く日本映画『ショータイム7』(こちらの表記はカタカナで「セブン」だけど)も現在公開中。
たまたまABCはこの出来事を放送する機会に恵まれた。このスクープをいかに番組にして放送するか。さまざまな想いが交錯する現場では刻々と変化する現状の中で、いかに事態を見せていくか、に心を砕くスタッフの姿が描かれていく。西ドイツ政府の対応との駆け引き、姿の見えない犯人、人質の安否。この事件をいかに幕引きするか(もちろん僕たちは最初から結末はわかっているけど)に一喜一憂する。
終盤の空港での銃撃戦はABCのコントロールルームの中で見守るしかない。錯綜する顛末。如何なる判断のもと、何をどう報道するか。スリリングなドラマ展開と、限定された空間を舞台にして緊迫した極限状況に対応するTVクルーのドラマに圧倒される。