
こんな地味な映画がようやく大阪でも(地元である京都でも上映されているようだから関西でも、か)ひっそりと公開される。東京から2ヶ月以上の遅れでたった1週間、シネリーブル梅田で1日1回だけの上映。
閉鎖間近の学生寮で住人たちがともに過ごす最後の5日間をつづった青春ドラマだ。「日本劇作家協会新人戯曲賞を受賞した大田雄史と出口明の戯曲を原作に、大田が自身の母校である京都大学吉田寮をモチーフに脚本をつくり直してメガホンをとった」という作品。
この映画のオリジナルは演劇なんだ。劇の映画化で作者自らが映画を監督するというパターン。一応劇場公開はされるが、低予算でほとんど自主映画サイズの作品だ。全く知らない新人監督のデビュー作。調べたらNHKのディレクターらしい。
一応は吉田寮をモデルにしたが、これは京都でも,京大吉田寮でもなく、架空の町の普遍的なお話になっている。
作り手の過大な感傷を出来るだけ抑えているが、それでもこれはあまりに過感傷。作り手の思い入れが過剰で少し面倒くさい私映画。だけど、それなりには距離が取れているから自己満足にはならない。
たった5日間の日々。5人が順番にひとりずつここを去っていく。ここで過ごした日々を胸に抱いて新しい場所に向かう。大学を卒業して(ひとりはまだ2回生)社会に出る。最後に出て行く美濃部は10年ここで暮らした。
映画は全編ほぼこの寮の中だけで展開する。ここからほとんど出ない。回想シーンもない。じっくりと5日間をドキュメントするばかりだ。
主人公の伸太郎が、今では更地になったここで自転車通勤の途中に立ち止まるシーンから始まり、再び最初のシーンに戻った後、美濃部に電話をするのがいい。スマホはあっさりつながり、映画は終わる。余計な感傷はない。