先日たまたま偶然見たばかりの映画『オールド・ジョイ』のケリー・ライカート監督の新作である。(と、いってもこれは2019年作品だから最新作ではない。しかも僕が見た時になんと隣の劇場【シネリーブル梅田の3番スクリーン】でやっているK24特集では彼女の最新作も同時間に上映されていた!)
彼女の映画は日本では今回が初めての劇場公開になるらしい。たまたま初めて先日見て驚いた作品の監督の映画が、たまたま上手いタイミングで初めて劇場公開されるなんていう奇跡に遭遇。だから、早速見に行くことにした。
これもK24の作品だから、『オールド・ジョイ』とは違い、あれよりは少しだけちゃんとしたお話のある商業映画にはなっている。もちろん相変わらずストーリー重視ではなく、淡々としたタッチで話は展開する。冒頭の船がやって来て、去っていくまでがゆっくり描かれるシーンを見て、またやっているよ、と思う。しかもスタンダードサイズでそれを見せる。のんびりとした間延びする描写が彼女の身上だ。
1820年代オレゴン州、ふたりの男が出会い意気投合して秘密裡にドーナツを作る。村にやって来た牛の乳を夜中に絞ってそれを使って美味しいドーナツを作り販売したら大人気に。だが、牛を所有する仲買人にばれてしまう。
これは美しい友情を描く映画。全く違うところ(ひとりはなんと中国からの移民)で生まれたふたり(と1匹が)こんなところで出会い、死んでいく。
あっけないラスト(冒頭の白骨死体の発見に呼応する)には茫然とする。いきなり終わるから驚く。 衝撃は『オールド・ジョイ』ほどではないけど、完成度は高い傑作である。