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監督・脚本は『PARKS パークス』や『ジオラマボーイ・パノラマガール』の瀬田なつき。彼女の映画で今までで一番長く、なんと2時間20分の大作だ。これは彼女が一番作りたかったものなのかもしれない。実に力のこもった作品に仕上がっていた。
先に140分の大作だと書いたが、お話自体はとてもささやかで小さな話だ。登場人物も少ない。交通事故で両親を目の前で同時に失った15歳の少女、朝(早瀬憩)と彼女を勢いで引き取ることにした叔母の槇生(新垣結衣)の同居生活が描かれる。
朝の中学卒業から始まって、高校に入学する時間が描かれる。朝は家族を失ったと同時に、人生の大きな転機を迎え、さらには叔母との初めての生活が始まる。いろんなことが重なる。あり得ないくらいにそれらが一気に押し寄せる。そんな彼女を受け入れて、同居生活を始める人付き合いが苦手な叔母。このふたりを主人公にして、ほんの数人の周りの人たちとの物語が丁寧に描かれていく。ここは小さな世界だけど、ここは今までの世界とは違う異国(違国)。
彼女たちふたりが自分たちの置かれた状況の中で最大限の努力をして前を見て生きる姿が描かれている。それが胸に沁みる。だからそこに大きなドラマはいらない。小さなドラマの積み重ね。それだけで充分だ。というか、それすら消化出来ず、ふたりはいっぱいいっぱいになっている。
ぎこちないまま、新生活をスタートさせるふたりの日々が丁寧に描かれていく。観客である僕たちはそれを静かに見守る。それだけのこと。なのにこれはとても素敵静かな小佳作なのである。