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映画・演劇のレビュー

『映画を愛する君へ』

2025-02-13 15:53:00 | 映画
こんなストレートなタイトルを付けられた映画をスルーするわけにはいかないだろう。しかも監督はアルーノ・デプレシャンである。さらにはたくさんの映画を引用したというシネマ・エッセイというスタイルのドキュメンタリータッチの作品で87分という短さ。どんな映画なのか気になるではないか。

映画は全11章からなる。ひとつひとつのエピソードは短い。ひとりの少年の映画との出会いから成長を通して映画と関わり大人になるドラマと映画にまつわるドキュメンタリーが並行して描かれるが、かなり自由度が高い映画でそこには明確なルールはない。全体はデプレシャンの自伝風作品のような展開だが、必ずしもそうじゃないみたいだし、各章の作り方もバラバラ。街頭インタビューやたくさんの映画館の映像をなんとなく挟んでいたり、挿入される映画のワンシーンも順序立てて何かを伝えるというよりアトランダム。『影武者』(『乱』かもしれない)やシネヌーヴォーが日本代表で登場するのは密かにうれしいけど。

『ショア』が凄い、と熱く語るエピソードがかなり長く描かれるのもご愛嬌。確かにあれは衝撃だった。ただいい映画だったけどあれは長いし、僕はあまり好きじゃない。

映画初体験の祖母と行った『ファントマ危機脱出』の話は好き。あんなつまらない映画を僕も昔見ていた。彼は姉がグズって途中で映画館を出ることになるけど。

トリュフォーの『大人はわかってくれない』への言及で、初見時は「あまり面白くなかった、」というところには共感するが、後日再度見てすごかったとか、「なんだよ、それって、」と思うけどそんなことも確かにアルアル。そこからあの映画の冒頭の映像が延々と引用される。エッフェル塔にトリュフォーの名前が重なるまで。こだわりが凄いのはいいことだ。彼が思うことだから、人それぞれでいい。まぁあれは悪い映画じゃないけど、僕は沖田修一の『子供はわかってあげない』の方が傑作だと思う。まぁそれもまた別の話だが。

16歳と年齢を偽ってベルイマンの『叫びとささやき』を見に行き、衝撃を受けるシーンは好き。スクリーン一杯の顔のアップには驚かされる。

『ひなぎく』をみんなに見せる話もいい。自分だってまだ見てないくせに解説なんかをする。

そんなこんなで、これはまとまりのない雑然とした映画になった。実は途中で何度か居眠りししそうにもなったし。まぁ映画は夢だから、いいよね。エッセイ部分と抱き合わせたドキュメンタリー部分がイマイチだから、全体的にモタモタしたのはやはり残念だった。

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