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ようやく映画版が公開された。同時に書かれた中村航の小説版は先行して出版されていて読んでいるし、このブログにも書いている。あの小説は楽しみにして読んだけど中村航なのに、あまり感心しなかった。それだけに映画はどんな切り口からあの話を作り変えたのか、気になる。
さて映画は? こちらは高橋泉の脚本で、草野翔吾監督という最高の布陣で贈る。だけど、なのに、やはりあまり感心しない出来だった。草野監督の前作『アイミタガイ』はギリギリのところで見事バランスをキープして傑作に仕上がっていたが、今回は無理だったみたい。あまりにいろんなところでご都合主義過ぎてお話に乗れないのだ。これはあからさまにある種のファンタジーだけど、それでもここまで辻褄合わせに終始されるとすべてにおいて嘘くさい。
今回も西田尚美がお母さん役を演じているのには笑える。それならお父さんも田口トモロヲでもいいのだけど、原田泰造。お話はこのふたりの40年前の文通と現代のお話の主人公である神尾楓珠と桜田ひよりの交換日誌という二重構造で、それをラストの武道館でのコンサートにつなぐのだが。
細部にまるで説得力がないから心地よいお話にはならないのだ。反発しながらも惹かれ合うという定番も生かされてない。
どうしてこんなことになってしまったのだろうか。船頭が多すぎて方向性が定まらなかったのかもしれない。みんなの意思統一がなされていない気がした。そして何より草野監督、彼はこれを引き受けて何を見せたいと思ったのか。いつもの彼ならこの題材ならもっと上手く料理ができたはず。あまり彼が乗っていない気がした。