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アンジェリーナ・ジョリー主演の久々のアクション映画。彼女がこの映画に出演する気になった理由はこれが単純だけど丁寧な映画だったからだろう。社会派映画だけではなく、以前はよく出ていたこういうアクション映画だって、こなす。でも、今はなんでもいいのではなく自分が出演する意味のある作品を選ぶ。要するにこれは彼女のそんなお眼鏡に適った作品だったのだろう。
監督は『ウインド・リバー』のテイラー・シェリダンだから、もしかしたらこれは面白いかもと期待して見た。手に汗握るとまでは言わないまでも、迫力ある映像とテンポにいいお話で最後まで飽きささない。冒頭の山火事と家ごとは破壊する暗殺シーンからラストまで、いろんなものが100分間の短い映画の中にてんこ盛り。
悪者がたったふたりで彼女たちを追い詰めるというのもいい。こいつらが残虐で強い。山盛り悪者が出てきてどんどん殺していくゲーム感覚の映画ではない。映画はいろんな意味で丁寧な作り方で、納得の出来。凄い映画ではないけど、文句なしの娯楽映画。少年とジョリーが追っ手から逃れてどう戦うのか。スクリーンから目が離せない。でも、それ以上ではない。
見る前は「もしかしたら、これは『刑事ジョンブック 目撃者』のアンジェリーナ・ジョリー版か」と思った。タイトルも内容もあの映画を彷彿させる映画で、もしかしたらあの映画のような傑作かとも思ったが、残念ながらそこまではいかない。それにアンジェリーナ・ジョリーは刑事ではなく、森林消防隊員。でも、殺し屋相手にまるで負けてない。森林消防隊員だから殺し屋相手に負けないというのはちょっと不思議なんだけど、気にさせない。もちろん派手なアクション満載の荒唐無稽な映画ではなく、主役がアンジーだからか、地味だけど納得するという作りになっているのはさすが。ラストまで緊張感が持続していくのだが。
もっといろいろ「何か」を書きたいのだけど実は書くことがない。それはこの映画が面白いけど、物足りないからだ。娯楽活劇として及第点の作品だけど。今、彼女がそのレベルの映画に満足するはずはない。テイラー・シェリダンならもう少しやってくれるのではないか、と思った。僕もアンジーも少し裏切られた気がする。