習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

百瀬文『なめらかな人』

2025-02-03 09:26:00 | その他
新進気鋭の美術家(らしい。僕は知らなかったし、彼女の作品も見たことがなかった)によるエッセイってあまりないかぁと思う。理屈っぽいのは勘弁って感じで読み始める。だけどこれはそんなのではない。とてもバランスがいい。というか、よくある作家(小説家、ね)が書いたものとは一味違う。彼女のエッセイは幾分長いし重い。ちょっとした評論みたいなエッセイだ。ある問題と向き合ってひとつの答えを出さないことには終わらない。だけどそれは論評ではなくやはりエッセイである。感覚的に捉えていく。なんだか不思議なテイストでやはり美術の人は違うなぁなんて思う。

冒頭のタイトルにもなっている『なめらかな人』からして衝撃的。陰毛を剃る話である。まず、えっ?って感じ。その後も挑発的で刺激的なエッセイが続く。さらには『身籠り』で描かれる出産と作品作りに対する疑惑。だけどこれは気を衒ったわけではなく自然体のエッセイなのだ。

読み終えるまで1週間以上かかった。一気読みはしんどいと思ったからだ。これは一応エッセイなのに重い。だから一回3篇くらいが限界。生々しいし、あからさまな内面の記録がさらりと晒されている。自分の病気に触れる『マイホーム』2部作からラストまでは一気に読んだ。最後のお墓を作品にする話まで。創作に関わる話が一番面白く興味深い。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 月島真昼『姉が壊れた。』 | トップ | 樋口有介『11月そして12月』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。