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映画・演劇のレビュー

浪花グランドロマン『月光夜想曲』

2012-09-24 21:18:43 | 演劇
 なんとNGR初の「王朝もの」である。国造りの話を壮大なスケールで見せていく。なんかNGRではなく、OSKとかSKDとか、タカラズカとか、(要するに歌劇団ですな)そんな感じで、大丈夫なのか、心配だったけど、さすがに浦部さん、負け戦のような芝居はしない。しかも、歌劇ではない。(まぁどこにもそんなことは書いてないんだけど)

 ちゃんと勝算があるからチャレンジするのだ。さすが大人である。22年目になる秋の野外劇。今までも様々なアプローチをしてきたが、ここまで王道をいくエンタメは初めてではないか。中途半端をされたら、目も当てられないようなものになる。そんなことは承知の上での挑戦である。

 1幕ものにしたのは、へんな大作感は払拭して、ストレートなドラマにして見せる覚悟ゆえであろう。最初は1時間45分くらいに仕立てると言っていたが、さすがに不可能だったようだ。この内容であれだけのアクションもあるのだから、2時間は適正な上演時間だ。シンプルなストーリーラインを遵守して、テーマもわかりやすい。へたな薀蓄を傾けることなく、でも、つまらないワンパターンにはならない。2つの国の抗争を、神と人との争いとして、図式化し、勝ち負けではなく、その先へと飛翔する。日本武尊のお話に収斂していくのは、確かにパターンだが、でも、そこまでのドラマがちゃんとしているから、気持ちよく見れる。

 舞台装置も単純なのに効果的。無理していない。でも、クライマックスの真水を使ったスペクタクルは凄まじい。あれだけの水のシャワーで、舞台から客席まで、よくやった。ようするに、効率的に見せているのだ。伊達に20年以上に亘って野外でテント芝居をしてきたわけではない。さまざまな試行錯誤を通して何が必要で何が不要なのか、理解している。

 天上と地上をつなぐ階段もすごいが、あれはもう少し効果的に使わなくてはもったいない。あれだけの仕掛けをただ、登り降りだけにしか使わないのはない。しかも、もっと出し方も考えてもいい。勿体つけて使おう! あれだけ重厚な階段なのだ。ラストで、舞台の奥が開かれて、そこに隠されていた巨大な白い鳥が飛び立つのは、お約束だが、こういうスペクタクルシーンをちゃんとはずさないのも、彼ららしくていい。



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