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一夏の冒険譚だ。ふたりの少年が旅に出る。そこにひとりの少女も絡んでくる。よくあるパターンであろう。93分の短い映画は、テンポよく進んでいく。感情的には描かれない。彼らの危ない冒険は、時には犯罪だし、やってることはめちゃくちゃだ。破滅的というわけではないけど、危険だし、最後は事故ルし。だけど、この冒険を通して、彼は確実に変わっていく。以前の彼ではない。供に旅する少年は彼を導き、最後は消えてしまう。途中で出逢う少女もすぐに別れる。旅の終わりはひとりぼっちだ。それって最初と同じだ。
彼はひとりだった。そこに転校生がやってきて、つまはじきもの同士仲よくなる、とかいうパターンではなく。人なつっこい転校生に絡み取られてしまっただけ。でも、彼を通して、少年は成長する。14歳の夏。まだ、子どもで特別なことなんかできはしないはずだった。なのに、こんなにもあり得ない体験の数々をする。
何かを伝えようとはしていない。破天荒でむちゃくちゃ、それだけ。だけど、それだからこそ、そこにはかけがえのない大切なものがつまっている。わかりやすい教訓なんかいらない。見たことのない風景がそこには広がっている。ただ、それだけでいい。