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映画・演劇のレビュー

『崖上のスパイ』

2023-02-15 16:09:16 | 映画

これはチャン・イーモウの新作だ。最近矢継ぎ早に新作が公開されている気がする。これは昨年の『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』とはまるでタッチの違う映画だ。いろんな映画を作っている。だけど、なんだかいつも本当にこれが彼の求めているものなのか、という気がする。今回はなんとスパイアクションである。『ミッション・インポッシブル』のようなストレートな娯楽大活劇映画ではないけど、派手なカースタントもあるし、銃撃戦もある。冒頭なんてパラシュートで雪山にダイブだ。なんだかド派手な映画なのだ。でも、お互い騙しあいの諜報合戦やら、お話の展開で見せる地味なシーンもあり、盛りだくさん。

でも、途中から何をしているのやらストーリーがよくわからなくなる。救出作戦やら、日本の悪行を世界に知らしめるとか、本来の目的なのだけど、それをどうすることで実現するのか、よくわかりません。特務警察側の背後には日本政府がいるのならそこもちゃんと描くといいのに、それはしない。満州をどうしたいのか。このミッションにどういう意味があるのか、そこもわかりません。それでは映画にのめり込めない。

要するにこれは中国映画お得意の国策映画でしかない。あれだけ凄い映画を作ってきたチャン・イーモウが、さらにはチェン・カイコー(『1950 鋼の第7中隊』)も、今 ではこんな映画を作るしかないのか。彼らは本気でこんな映画を作りたいのだろうか。よくわからない。「共産党万歳、正義は勝つ」そんな映画を作るのが目的なんだろうがそれってなんだか悲しい。

重要な場所としてアジア映画とかいう映画館が出てくるけど、その劇場内の椅子がなんだか豪華で、最近の映画館のようなのだ。1934年の満州の映画館があんな客席だったのか。NHKの朝ドラ『カムカム』の昭和の映画館の椅子が明らかに今のTOHOシネマズとかで使われている椅子だったのに興ざめしたけど、あれと同じ感じでなんだかなぁ、と思う。さらには主役であるソ連で鍛えられたスパイ男女二組が夫婦と恋人同士って、なんだかなぁ、と思う。職場恋愛かなぁ。そんなこんな、いろんな意味で残念な映画。


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