こんな話ありなのか。なんでもありの今の西加奈子には怖いものはない。ふつうやらない。西加奈子版『ET』は、スピルバーグも驚きの展開だ。もちろん、これはSFファンタジーではない。
ひとりの少年の成長物語だ。彼と不思議な転校生の少女の交流を通して、小さな田舎町で起きる奇跡の物語が始まる。そんなバカな、と思いつつも、信じたくなる。宇宙人はいる。だって、僕自身がほかならぬ宇宙人なのだから。
こういう大きなスケールのお話を、この小さな田舎の温泉町で見せていく。まく、という行為はふつう女の子はあまりしない、なんてことを、言われて改めて納得させられる。そんなこと、今まで考えたこともなかった。
「まくことが好きなのは、男だけだと思っていた。」という一文から始まるのだが、そんなことすら思いもしなかった僕は、そこから始まる、この一見たわいもないようなお話にどんどん引き込まれ、最後は信じている。
コズエという少女の正体がなんであろうともいい。子供から大人へと変わっていくからだの不思議の少年は戸惑い、嫌悪する。彼の初恋物語だとして受け止めてもいい。だが、この小さなお話はそんな簡単な枠に収まることはない。壮大なスケールのちっちゃなお話なのだ。
宇宙人だという、まく子の存在を信じてしまう自分。彼女が誰であろうと、何であろうと構わない。自分は彼女が好き。人を受け入れる。好きになるって、そのすべてを、そのまま受け入れて信じることで、だまされてもかまわないと思えることだ。宇宙人であることは、たまたま、でしかない。