『コングレス 未来学会議』はロビン・ライトが本人役で出演する。売れなくなった女優だなんて、酷い設定を受け入れる。さすが大物女優だ。アリ・フォルマンは今回、前半を実写、後半でアニメーションというスタイルを選ぶ。
役者が自分のイメージ(外見だけではなく、内面も、である)をそのままトレースしたCG映像に身を売る。コンピュータに本人のすべての情報をインプットして、そのCGが自在に演技をする権利を与える。本人はCGに芝居をさせるだけで、もう芝居をすることはなくなる。CGなので、年を取らない。
後半、アニメになったロビン・ライトがCGになった本人の出演する映像と向き合う。もう自分はいらない。リアルとは何なのか。演じることで得るものとは何なのか。人間が何を求め何のために生きるのか。なんだか、生きていくことの根幹にかかわる問題へとお話がシフトしていく。
『夏をゆく人々』は、一人の少女のひと夏の物語。養蜂家の家族の話でもある。父親のもとで、家族総出で蜜蜂の飼育を行う。自然のままのおいしい蜂蜜を作るのだが、なかなか上手くはいかない。家業は幼い子供たちの犠牲の上で成り立つ。主人公の少女は4人姉妹の長女。いろんな想いを抱えて、生きている。父が嫌いだ、というわけではない。だけど、このままでいいとは思えない。行き詰まることは必至だ。
『人生スイッチ』は6話からなるオムニバス。大胆な設定で、有無を言わさない。まんまなお話もある。捻る気なんてさらさらない。どどん、といく。直球勝負。短い話からそこそこの長さまで。(10分から30分弱まで)そんなぁ、というようなお話に圧倒される。3話なんてスピルバーグの『激突』を思わせる。
一番おもしろかったのは、駐車違反の話。本人にとっては、ほんのちょっとのことが、人生に終止符を打つような事態へと進展していく。5話目の息子の起こした事故を隠蔽する話や、最後の結婚式の途中で夫になる男の浮気が発覚する話も、もうどこまでやるのか、というくらいに過激で面白い。