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映画・演劇のレビュー

『サイドウェイズ』

2010-07-23 03:34:09 | 映画
 あの秀作『サイドウエイ』のリメイクである。アレクサンダー・ペイン監督のあの作品では、舞台はヨーロッパだったが、今回はアメリカに移して、日本人キャストで映画化した純粋日本映画だ。だが、20世紀FOXが配給し、監督もアメリカ人( チェリン・グラック)という異色の組み合わせ。まるでアメリカ映画みたいな印象を与える。(スタッフもほとんどアメリカ人だし)

 映画全体のテイストはオリジナルとは全く違う。ストーリーは同じなのに、それ以外はまるで別の映画だ。ここまで違う印象を与えるのはなぜだろう。かなり軽めの仕上がりがアメリカンテイストか。(オリジナルはアメリカ映画なのに、まるでヨーロッパ映画だし)

 生瀬勝久がとても難しい役をきちんとこなしていて見事。中年のオヤジで、典型的な日本人のルックスなのに、なぜか女にもてるという役所を自然に納得がいくように見せてくれる。相手役の小日向文世は、これまた典型的ないじいじした日本人を予定調和のイメージで見せながら嫌みにはならない。この主役の2人に対して、女優陣のほうは少し浮いてしまった。鈴木京香も菊池凛子もなんだか無理してる。彼女たちは受けの芝居なので、仕方ないのかもしれないが、なんだか嘘くさい。

 この男女4人によるワイナリー巡りの1週間ほどのバカンスが描かれていく。来週には結婚を控えた生瀬の独身最後の休暇に小日向がつき合わされる、という構図だ。カリフォルニアの自然に包まれて、心も体ものびのびさせて過ごす至福の時間。おおらかで、笑えて、楽しい。

 正直言うと、何の野心もないプログラムピクチャーなのだが、(オリジナルがあれだけ心にしみる傑作だったのに)特に期待もなく見たなら、いい気分にさせてくれる。それだけの映画だ。でも、それだけ、が、けっこう貴重なのかもしれない。






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