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映画・演劇のレビュー

角田光代『何も持たずに存在するということ』

2010-07-23 03:54:38 | その他
 2冊のエッセイを読む。基本的にはこのブログでは、取り上げる本は小説だけに限定して書いている(でなくては収拾がつかない)のだが、今回は例外だ。角田さんと内田さんというとてもわかりやすい2人の素直な意見が、今の僕にはとても心に沁みてきた。だからその話をほんの少しここに書きとどめておきたかったのだ。

 帯に「ヘラヘラした大人になりたい」と書かれてある。ドキッとする。50歳にもなって、いつもヘラヘラ生きている自分のことを言われているような気がしたからだ。いくつになっても高校生レベルの思考で、彼らとまるで同じ目線(あるいはそれ以下)で、ものを考えてしまい平然としている僕は、普通の大人の人から見れば、ただのアホなのだと思う。

 でも、精一杯大人になろうとする子どもたちとつきあっていて、僕からできるアドバイスは、「大人だっていつもギリギリのところで生きているのだから、みんなと同じなのだ」ということぐらいしかない、というのが正直なところで、そのことさえ伝えれたならいいと思って生きている。

 それは大人を嘗めていい、ということではない。大人のいいところを見習え、ということなのだ。それって、彼らはわかってくれるかな。僕はいつもそのことが少し心配で、気にしてる。

 角田さんは7歳の頃から変わらない。作家になりたいと思った日から、作家としてデビューした23歳の日、そして今。ずっと同じように全力で生きている。そんな姿がこのエッセイ集からしっかり伝わってくるのがいい。なんだかすごく元気をもらった。

 それは同時に、この同時期に読んだ内田樹さんのエッセイ『ひとりでは生きられないのも芸のうち』にも言える。大ヒットした『下流志向』以来この人のわかりやすい話はいつも新鮮だった。今回のテーマはタイトルにあるように、甘えてもいい、ということだ。人は強くならなくてはならない、とか、一人でも生きていけるように、とか。そんなの僕も思わない。

 僕は自慢ではないけど(というか、そんなの自慢にはならないし)いつも人に頼っている。自分一人では何もできない。それが時々凄く恥ずかしいけど、何でも、出来る人に助けてもらえればいい。

 それでも時々(ほんのごく稀に)僕も人の役に立つことがある。そして感謝されたりもする。その時はえっへん!と胸を張る。「広瀬先生すごいです」とか、「広瀬先生のおかげです」とか言われると、なんかとてもうれしい。

 内田さんのはっきりしたものいいは僕を元気にする。最近家族について考えていたことの明確な答えがここにあった。なんかうれしい。非婚のこと、少子化のことからスタートして、仕事のこと、メディアのこと、そして死と生、恋愛まで。こんなにもズバッと答えを出されたなら、これは宗教か、と笑ってしまうくらいだ。

 と、言うことで、今回はなんだか、かなりプライベートな感想を書いてしまった。あまりこの2冊の内容には触れていないが、2冊ともとてもいい本です。

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