2017年のペルー映画。アンデスの山の上でたったふたりで暮らす老夫婦の日々を静かに描く。彼らの周囲には誰も住まない。そんな場所でふたりぼっちで生きている。そして都会に行ったままで、帰らない息子をずっと待ち続ける。
オスカル・カタコラ監督作品。まだ若いのにこの映画を撮った後亡くなったらしい。これはまだ監督第二作。だが確かな自分のスタイルを貫く。カメラは終始フィックスのままで一切動くことはない。スクリーン内で動くのは登場人物であるふたりの方。音楽もない。ヤギと羊、リャマ。
こんな地味な映画が日本で公開されていたって驚きである。しかもペルーでは大ヒットしたらしい。何がペルーの人たちの琴線に触れたのだろうか。無口な映画は一切心情を言葉にして語らない。ただふたりが淡々と日常を過ごしていく、その姿を追うだけである。
ただ事件は時に起こる。ヤギたちが狐に殺されたり、マッチが無くなったから村まで買いに行った夫は途中で倒れてしまったり、なんと火の不始末から家が燃えてしまったり。食べるものがなく苦しみ、やがて、夫は亡くなって妻はひとりになる。悲惨な映画なのにとても崇高なものを見た気になった。生きていくことってこんなものかもしれない。だからといって、それを全否定は出来ない。ここに描かれるふたりの姿はとても美しいからだ。